2021年5月14日、日本看護協会ホームページより「2021年度改訂版 看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」が更新された。
このガイドでは、社会における看護へのニーズが変化する中で、あらゆる場の看護管理者及び看護師に対し
・安全で質の高い看護を効果的・効率的に提供する
・看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関する基本的な考え
・各施設において必要な体制整備
上記について目指す姿を示すものとして公開されている。
今回は看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の、それぞれの役割と協働についての基本的な考え紹介する。
看護師・准看護師及び看護補助者、それぞれの役割と責任
【看護師】
●役割
・多様な場にいる多様な対象者について、身体的、精神的、社会的、文化的側面からとらえ、系統的な情報収集を行い、情報を分析、解釈、統合することで対象者の状態を総合的にアセスメント(客観的に評価や査定する)し、その後の変化も予測しながら、健康の保持増進、疾病予防の観点も含め、看護課題の優先順位を的確に判断する。
・対象者や家族の尊厳や権利、価値観を尊重・擁護しながら、意思決定を支援する。
・科学的根拠に基づき、対象者の意向や特性、状態やその変化に応じた計画を立て、看護を提供する。
・各保健・医療・福祉関係職種の役割を理解した上で、対象者の目標を共有し、保健、医療、福祉チームとして質の高いケアを提供できるよう他職種と連携・協働する。
●責任
・対象者の全身状態を総合的に把握した上で、安全に、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話(以下、「療養上の世話」と記載)及び診療の補助を実施する責任がある。
・対象者の全身状態を観察し、変化や反応をとらえながら、必要な場合には、ケアの途中でも自らの判断で方法等を変更や中止(診療の補助については医師に報告・相談し、改めて指示を受ける)し、対象者にとって最も負担が少なく、最良の看護を提供する。
・准看護師への療養上の世話の指示を適切に行う責任がある。
・看護補助者への看護補助業務の指示と指導を適切に行う責任がある。
【准看護師】
●役割
・看護師等の指示のもと、対象者の状態や変化を観察し、記録・報告をするとともに、他職種と協調しつつ、対象者や家族の尊厳や権利、価値観を尊重及び擁護し、安楽に配慮しながら安全に看護を提供する。
●責任
・看護師等から指示を受け、療養上の世話及び診療の補助を安全に実施する責任がある。
・対象者の状態を観察し、変化や反応をとらえながらケアを行い、必要な場合には看護師等に報告し、看護師等から新たな指示を受けて対象者の状態の変化に応じた方法で看護を提供する。
【看護補助者】
●役割
・看護が提供される場において、看護チームの一員として看護師の指示のもと、看護師長及び看護職の指導のもとに、看護の専門的判断を要しない看護補助業務を行う。
・看護補助者は対象者の状態に応じてケアの方法を変更するなどの看護の専門的判断は行わないため、標準化された手順や指示された手順に則って、業務を実施する。
●責任
・看護補助者には自らの役割や責任の範囲を明確に理解し、看護師の指示を受け、安全に看護補助業務を実施する責任がある。
看護師と准看護師の協働についての基本的な考え
【法律に基づき、准看護師は看護師等の指示を受けて業を実施しなければならない】
・保健師助産師看護師法(第 6 条)に基づき、准看護師は医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて業(療養上の世話及び診療の補助)を行わなければならない。
●「療養上の世話」に関する准看護師への指示は、看護師が行うことが望ましい
・「療養上の世話」は看護師の業務独占である。
・療養上の世話を行うためには、対象者の状態を総合的にアセスメントした上で、その人にとってどのような療養上の世話が必要であるのかについての的確な判断を行い、対象者の状態や個別性に応じた方法を検討する必要がある。
・法律上は「准看護師は医師、歯科医師又は看護師の指示を受ける」とされているが、実際には看護師が対象者の状態をアセスメントした上で最適な方法についての判断を行い、准看護師に適切に指示を出すことが望ましい。
●看護師から准看護師への指示に「看護計画」が活用できる
・看護師等から准看護師への指示のあり方に関する法的規定はない。
・個々の対象者の目標や具体的な看護の内容等を記載した「看護計画」は、療養上の世話の実施に関する計画を含んでおり、実際にその計画に基づいて看護が提供される。そのため、「看護計画」は保健師助産師看護師法で定める療養上の世話に関する看護師から准看護師への指示に活用で
きるといえる。
【看護師は准看護師に対して適切に療養上の世話の指示を出す責任を負う】
・看護師には、准看護師に対して適切に療養上の世話の指示を出す責任がある。
・看護師は、対象者の状態を総合的にアセスメントした上で、その人にとってどのような療養上の世話が必要であるのかについての的確な判断を行い、対象者の状態や個別性に応じた方法を選択できる能力が求められる。
・看護師が准看護師に療養上の世話の指示を出す際、看護師はこのアセスメントや判断の妥当性についての責任が問われる。
・看護師が的確な判断のもとに指示を出したと示すことができるよう、療養上の世話の指示を出した看護師が誰であるのか、どのような指示を出したのかが記録に残っていることが重要である。
・指示に関する記録の重要性については、診療の補助と療養上の世話に違いはない。
【看護師と准看護師の役割の違いを踏まえ、業務を区分する】
・保健師助産師看護師法で定める看護師と准看護師の業の違いに基づき、役割の違いを参考に、看護師と准看護師の業務(療養上の世話及び診療の補助のみならず、現場で看護職が担う業務全般を指す)を区分するべきである。
-看護計画の立案と評価-
・対象者のアセスメントやそれに基づいて必要な看護の内容や対象者に応じた方法を判断することは看護師の役割である。准看護師は、看護師がこのような判断のもとに出す指示を受け、対象者の状態を観察したり、看護を安全に提供したりする役割を担っている。
・看護計画の立案・評価は療養上の世話についての指示を出す立場にある看護師が担うべきである。
*「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生省令第37号・平成11年)の第70条、及び「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(厚生省令第80号・平成12年)の第17条では、「看護師等(准看護師を除く)は、利用者の希望、主治の医師の指示及び心身の状況等を踏まえて、療養上の目標、当該目標を達成するための具体的な指定訪問看護の内容等を記載した訪問看護計画書を作成しなければならない」とされている。
医療機関及び訪問看護ステーションにおける看護職と看護補助者の協働についての基本的な考え
【看護補助者の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」を含まない看護補助業務とする】
・保健師助産師看護師法(第31条)において、「療養上の世話」と「診療の補助」は看護師の業務独占であると定められているため、看護補助者は「療養上の世話」と「診療の補助」を実施してはならない。
・看護補助者の業務範囲は「療養上の世話や診療の補助」に該当しない看護補助業務である。
・看護補助者の業務範囲内で、個々の看護補助者の経験、研修受講状況、能力等により、業務を分担することは可能である。
・国家資格を有していても、看護職の免許を有しない者は「療養上の世話」と「診療の補助」は実施できない(医師・歯科医師を除く)。
・看護師の業務独占を解除し、診療の補助の一部を業としている資格を有する者が「診療の補助」を行う場合を除く。
【看護師は看護補助者に対して業務の指示を適切に出す責任がある】
・厚生労働省告示第58号「基本診療料の施設基準等の一部を改正する件」(令和2年3月5日)に基づき、看護補助者は主治医若しくは看護師の指示を受けて看護補助業務を実施しなければならない。
・食事、清潔、排泄、入浴、移動等の直接ケア(厚生労働省通知「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発 0305 第2号・令和2年3月5日)では「療養生活上の世話」)については、その業務が療養上の世話でない場合に限り、看護補助者が実施することができる。
・療養上の世話であるかどうかを判断する役割を担うのは、療養上の世話を業務独占している看護師である。
・業務が療養上の世話であるかどうかは、業務の内容だけでなく、対象者の状態によって決まる。
・清拭を例に挙げれば、体位変換によって容易に循環動態が変動するような患者の清拭は看護の専門的判断を要する業務であるため療養上の世話に該当するが、体位変換によって状態が変化するリスクがない人では療養上の世話に該当しない場合もある。
・対象者の状態を把握した上で、看護師が的確に判断することが求められる。
・看護師には、業務の内容だけではなく、対象者の経過・その時点での状態・予測される変化などを総合的に考慮した上で、その業務が療養上の世話に該当するかどうかの判断を的確に行い、看護補助者に業務の指示を出す責任があるといえる。
・看護師は業務を指示する上で行った判断や、指示内容について責任を負う。
・看護師には、指示を受ける看護補助者の能力、研修受講状況等を考慮し、その看護補助者の能力の範囲内で実施できる業務であるかどうかを判断した上で、看護補助業務に指示を出す責任がある。
・看護補助者が業務を実施する体制として、看護補助者が単独で実施する場合と、看護師とともに実施する場合がある。
・業務の実施体制も含めて看護補助者に業務の指示を出す必要がある。
*看護師が看護補助者に業務の指示を出す際には、看護師にはその判断の妥当性についての責任が問われる。看護師が的確な判断のもとに指示を出したと示すことができるよう、特に対象者と直接関わる直接ケアについては、指示を出した看護師が誰であるのか、どのような指示を出したのかが記録として残っていることが重要である。
【看護師・准看護師は看護補助者に対して業務の適切な指導を行う責任がある】
・厚生労働省通知「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発 0305 第2号・令和2年3月5日)を参照すると、看護補助者は看護師長及び看護職の指導の下に業務を行う必要がある。
・看護補助者は看護の資格を有しておらず、医療に関する教育も受けていない。
・対象者の状態に応じたケアの方法を判断する立場にはなく、標準化された手順や指示された手順に則って業務を実施する。
・看護師には、看護補助者に対して業務手順を示したり、具体的な方法を説明したりしながら、対象者の状態に応じた方法を指導する責任がある。
・准看護師が看護補助者に指導を行う場合には、看護師から看護補助者への指示に基づき、その具体的な方法を説明する。
次回は看護師と准看護師が協働する上で必要な体制整備について紹介していく。
本サイトでは、看護師、保健師、助産師、看護助手、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、ケアマネージャーを対象とした求人情報の無料掲載を行っている。人材の確保の手段の一つとしても広く周知されたい。
上記を通じて、最前線でご尽力されている医療・福祉機関の方々の一助になることを望む。