看護師の給料・休日・職場環境実態調査
2020年9月11日、日本看護協会はホームページにて「2019年病院および有床診療所における看護実態調査」を公開した。
この調査は、看護職が将来にわたって働き続けられるために重要な、夜勤・交代制勤務の実態、時間外労働の実態、看護職が受ける暴力・ハラスメントの実態などについてまとめられている。
この調査は、
1.病院 職員調査 結果
2.有床診療所 施設調査 結果
3.有床診療所 職員調査 結果
の3調査に分けられ、2の「有床診療所 施設調査 結果」では、初任給や非管理職の月額給与等も公開されている。
本記事では、日本看護協会も注視している「夜勤・交代制勤務」「時間外労働」「看護職が受ける暴力・ハラスメント」の実態に加え、職場環境として重要な給与・休日(主に有床診療所)についても見ていく。
看護師の給料・休日・職場環境実態調査の内容
1.病院 職員調査 結果
・調査対象:病院_施設調査と併せて8,300施設の病院に勤務する看護職員(1 施設、10 名以内)を対象
・調査期間:2019年9月2日~10月11日
・調査方法:Web調査(調査対象者がインターネット上サイトにアクセスして回答)
・回収状況:回収数15,026件、回答者の職位別内訳は
「スタッフ(非管理職)」6,591人、43.9%
「中間管理職」7,394人、49.2%
「管理職」614人、4.1%
など。今回の調査では「スタッフ(非管理職)」に集計を限定。
●夜勤・交代制勤務の実態
・看護職員が行っている夜勤・交代制勤務の形態は
「三交代制勤務」:15.7%
「二交代制勤務」:
「1回あたり夜勤16時間以上」43.1%
「1回あたり夜勤16時間未満」は8.8%
「夜勤をしていない」:21.4%
なお病院(施設)調査では、夜勤を要する部署に配属されている看護職のうち、夜勤免除者は 13.5%。
・三交代制勤務の実態
【準夜勤】
1カ月間の準夜勤の回数:平均4.2回
実際の1カ月間の総準夜勤時間数:平均34.4時間
就業規則上の1回の時間数:8.5時間
就業規則上の1回の休憩・仮眠時間数:平均1.0時間
実際の1回の平均休憩・仮眠時間数:0.7時間
【深夜勤】
1カ月間の深夜勤の回数:平均4.3回
実際の1カ月間の総深夜勤時間数:平均35.6時間
就業規則上の1回の時間数:8.3時間
就業規則上の1回の休憩・仮眠時間数:平均1.0時間
実際の1回の平均休憩・仮眠時間数:0.9時間
・二交代制勤務の実態
1カ月間の夜勤の回数:平均4.7回
実際の1カ月間の総夜勤時間数:平均70.0時間
就業規則上の1回の時間数:16.1時間
就業規則上の1回の休憩・仮眠時間数:平均2.1時間
実際の1回の平均休憩・仮眠時間数:1.9時間。
●時間外労働の実態
【時間外労働時間】
・正規雇用のフルタイム勤務者のうち
「時間外労働があった」者:77.0%(2019年7月実績)
「時間外労働があった」者の時間外労働:平均8.9時間。
「40 時間以上」:1.5%
・上記のうち
時間外勤務を申請した時間数:平均6.0時間
うち時間外勤務手当が支払われた時間数:平均5.9時間
実際に行った時間外勤務と特に申請時間には乖離が存在。
法令に則った労働時間の適正な把握と割増賃金支給が成されるよう、職場の労務管理の見直しが求められる。
●看護職が受ける暴力・ハラスメントの実態
・暴力、ハラスメントの内訳
「精神的な攻撃」:24.9%
「身体的な攻撃」:21.7%
「人間関係からの切り離し」14.6%
「意に反する性的な言動」14.4%
・「精神的な攻撃」の内訳
「同じ勤務先の職員」:52.3%
「患者」:44.4%
「身体的な攻撃」には「患者」からが 93.4%を占める。
・正規雇用のフルタイム勤務の看護職に限定
「精神的な攻撃」が「ある」と回答した者の離職意向:56.3%
「身体的な攻撃」について「ある」と回答した者の離職意向:3.3%
・「受けたことがない」看護職員の離職意向
「精神的な攻撃」:40.8%
「身体的な攻撃」:42.3%
受けたことはなくとも、離職意向は4割りを締める。
●給与に関して
「現在の仕事の量と仕事の内容に対して今の給与は妥当である」という項目では4割に過ぎず、否定的な評価が多くみられた。
2.有床診療所 施設調査 結果
調査対象:全国の有床診療所から無作為抽出した2,500施設
調査期間:2019年9月2日~10月11日
調査方法:自記式調査票の郵送配布・回収
回収状況:有効回収数320件(回収率12.8%)
●給与の実態
・新卒看護師の予定初任給
2020年度採用予定の新卒看護師の予定初任給の平均:高卒+3年課程では基本給与額186,612円(税込給与総額239,891円)。
・勤続10年、31~32歳、非管理職の看護師の月額給与
平均の基本給与額:222,371円(税込給与総額は292,842円)。
●休日の実態
・週休制
「週休2日(4週に8日の休日)」:109件(34.1%)
「週休2日(1週に必ず2日の休日)」:80件(25.0%)
「週休1日半」「週休1日」(合わせて):14.0%
・所定の年間休日総数
年間所定休日数平均:106.3日
病院(平均118.0日)と比較して11.7日少ない。「100日未満」「100~110日未満」が多いという結果。
3.有床診療所 職員調査 結果
調査対象:有床診療所調査で抽出した2,500施設に勤務する看護職員(1施設5名以内)を対象
調査期間:2019年9月2日~10月11日
調査方法:Web回答(調査対象者がインターネット上サイトにアクセスして回答)
回収状況:回収数528件、回収率 4.2%である。
※調査対象となった全国の有床診療所320施設において、所属する看護職員へインターネット上でのアンケート調査を任意で求めているため、実際の調査対象者数は把握できない。
回答者の職位別の内訳:
「スタッフ(非管理職)」374 人(70.8%)
「中間管理職」116 人(22.0%)
「管理職」11 人(2.1%)
などである。
●夜勤・交代制勤務の実態
・夜勤・交代制勤務の勤務形態
「三交代制勤務」2.5%
「二交代制勤務」47.7%
二交代制勤務が半数を占める。また、
「宿日直制」6.3%
「オンコール」1.5%
「夜勤をしていない」39.0%
・二交代制勤務の実態
1カ月間の夜勤の回数の平均:4.7 回
実際の1カ月間の総夜勤時間数平均:3.7時間
就業規則上の1回時間数:16.0時間
就業規則上ならびに実際の1回の休憩・仮眠時間数
休憩平均:2.2時間
仮眠平均:2.1 時間
●時間外労働の実態
・時間外労働時間
正規雇用のフルタイム勤務者のうち
「時間外労働があった」:71.2%(2019 年 7 月実績)
「あった」者の時間外労働平均:8.1時間
・上記のうち、時間外勤務を申請した時間数:平均6.9 時間
そのうち時間外勤務手当が支払われた時間数:平均6.4 時間。
●看護職が受ける暴力・ハラスメントの実態
・勤務先における患者・家族・職員などからの暴力・ハラスメントの実態
職員が受けた暴力・ハラスメントの内訳
「精神的な攻撃」:13.1%
「意に反する性的な言動」:10.2%
・「精神的な攻撃」の内訳
「同じ勤務先の職員」:60.3%
「患者」24.7%
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