病院など医療機関で使用する医療機器は、常に清潔で安全な状態で提供する必要があります。滅菌処理が不十分なまま使用され、院内感染につながるといった事態は確実に防がなければなりません。それでも、滅菌を怠ったことによる医療事故は少なくありません。
そこで、こうした器材や物品を管理しながら滅菌処理を行う「滅菌技士(師)」の存在が注目されています。
従来は資格制度がなく、医療従事者ならば誰でも担っていた仕事でした。しかしその役割が持つ責務の重要性が考慮され、2000年より日本医療機器学会により専門認定制度が発足されました。
滅菌技士(師)を専門として働く人のほか、看護師が兼任する場合もあります。ステップアップを目指して資格を取得してみてはいかがでしょうか。
滅菌技士(師)の業務内容

滅菌技士(師)の業務は、器材や物品の管理と滅菌処理です。病棟や診療室から使用された器材やガーゼなどを、各種滅菌機を使って減菌します。滅菌作業だけでなく、医療機械のメンテナンス作業や管理を行う場合も多いです。
業務は具体的に以下の流れで行われます。
- 洗浄
滅菌する前に、手術等で使用した器材を洗浄します。ウォッシャーディスインフェクターを使用します。
↓ - 滅菌
洗浄した器材を滅菌するためにセット組にします。医療施設で行われる滅菌では、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)、エチレンガス滅菌(EOG)、過酸化水素ガスプラズマ滅菌の3種類が主流です。
↓ - 保管・管理
滅菌した器材を安全に保管することも滅菌技士(師)の重要な業務です。この際、包装材が破れたり濡れたりしてまうと、滅菌状態を維持できませんから、保管体制に注意する必要があります。
滅菌技士(師)として認定されるには
滅菌技士(師)の専門認定制度には、現在「第2種滅菌技士」と、より高度な知識と技術を持っている者に認定される「第1種滅菌技師」があります。
第2種滅菌技士の認定を受けるためには、日本医療機器学会の会員であり、滅菌供給業務の実践に3年以上携わっている必要があります。
そのうえで、所属施設長の推薦状を添えて申し込み、学会が定める認定講習会に参加します。この講習会の受講態度などから総体的に判断され、問題がないとみなされれば認定となります。
認定期間は4年間で、更新申請をすれば審査が行われたうえで更新されます。
認定講習会は11月末~12月初頭、全国3箇所で行われます(※平成30年度)。例年7~8月頃から募集が開始され、先着順で定員に達し次第締め切られますので、早めに申し込みましょう。
認定講習会での講習内容は以下のとおりです。
- 滅菌概論
- 洗浄、浄化
- 高圧蒸気滅菌
- 酸化エチレンガス滅菌
- 過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌
- 過酸化水素ガス低温滅菌
- 低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌
- 滅菌インジケータ
- 滅菌包装
- 消毒剤の使い方
- 滅菌業務の外部委託
参照:各種制度 | 一般社団法人日本医療機器学会
滅菌技士講習会 | 一般社団法人日本医療機器学会
第2種滅菌技士に関しては、前述の通り講習会を真面目に受講していればまず不合格となることはありません。受講資格を満たし受講さえできれば、ほとんどの人が合格できる認定制度となっています。
一方、第1種滅菌技師については、第2種滅菌技士の認定を受けているうえで、指定の学科講習および実技講習を修了し、講習会で行われる筆記試験に合格する必要があります。
第1種滅菌技師の登録者数は約330名(平成30年度現在)。試験のレベルは高く、合格者は少ないのが現状です。
第1種滅菌技師は、「士」ではなく「師」の字が使われています。より難易度の高い認定制度であることと同時に、より専門性の高い役割を担う者であることを物語っています。
日本医療機器学会が認定するこれら滅菌技士(師)の資格のほか、日本滅菌業協会の認定している「滅菌管理士」という資格があります。
こちらも、医療業界で働く看護師のキャリアアップとして人気の資格になっています。
看護師が滅菌技士(師)を取得する意義
医療現場での滅菌作業や器材管理は、近年ますます専門性が高くなり、資格保有者のニーズが高まっています。看護師が滅菌技士(師)の認定を得られれば、さまざまな活躍の場が増えるでしょう。医療機関としては当然、滅菌技士(師)として専任雇用するよりは、看護師が滅菌技士(師)の認定も受けているほうが望まれます。
現在看護師として活躍している方が滅菌技士(師)の認定を受けるのであれば、看護業務も続けながら兼任で滅菌技士(師)としての業務を行う場合がほとんどでしょう。現在の職場でそれが可能なのか、待遇などがどう変わるのか、それらが不明な場合は、一度上司などに相談してみるといいでしょう。
滅菌技士(師)の活躍の場は、病院などあらゆる医療機関となります。滅菌業務を怠ってもいいという医療機関などは存在しないためです。ですから、医療に従事する限り、この認定を取得して無駄になるということは考えられません。
また、医療機関はもちろんですが、活躍の場はそれ以外にも及びます。医療機器メーカーや薬剤メーカーなど一般企業からのニーズもあるのです。これらのジャンルへの転職を視野に入れている看護師なら、そのきっかけ作りとして取得するのもいいのではないでしょうか。