2020年12月2日、参議院地方創生及び消費者問題に関する特別委員会の国会中継にて、PCR検査の信頼性についての質疑があり、「PCR検査陽性判定=ウイルスの感染性の証明ではない」と厚生労働省から答弁があった。
その質疑応答の一部をまとめた。
「PCR検査陽性判定=ウイルスの感染性の証明ではない」と発言された答弁の内容
質疑者
柳ケ瀬裕文 参議院議員(青)
答弁者
佐原康之 厚生労働省大臣官房危機管理医務技術総括管理官(赤)
山本博司 厚生労働省副大臣
【柳ケ瀬裕文 参議院議員】
PCRの信頼性について疑義が聞こえてきている。
PCR検査の感度が高すぎるため、死んだウイルスや微量なウイルスにも反応し、他者に感染させる可能性のない人も陽性と判定し、感染能力のない人まで隔離してしまっているのではないか。
PCR検査は採取した唾液などに、ウイルスの遺伝子の一部が含まれているかどうかを判定し、含まれていれば陽性、含まれていなければ陰性と判定するものであるが、ウイルスの特性までは分からない。感染力のない微量のウイルスや死んだウイルスでも存在が確認されれば陽性となる。
検出するまでのサイクル数を表すCt値に注目する。
PCR検査ではサンプルのウイルス遺伝子を増幅させて判定する。増幅させる回数を表すのがCt値と言われている。
1サイクルで2本、2サイクルで4本、3サイクルで8本と、乗数的に増幅する。
これを繰り返し、ある特定の反応が立ち上がったらそれを陽性と判定する。
Ct値が高いところで判定が出ればウイルスは微量、低ければ量が多いと言える。
国立感染症研究所が病原体検出マニュアル3/19に公表し、このマニュアルに沿った判定方法を感染検法と呼んでいる。
機器による判定はこれが検査の基準となっている。
陽性判定に必要なCt値は40となっており、これは1本の遺伝子を1兆本に増幅して判定を見ることになる。
微量なカケラまで拾う設定となっているのではないか。
この40という設定が高すぎることによって幅広い人たちを陽性判定としてしまっているのではないかという問題である。
質疑:Ct値を40とした理由、検出可能なウイルス遺伝子の数はいくつなのか
答弁:【佐原康之 厚生労働省大臣官房危機管理医務技術総括管理官】
国立感染症研究所が開発した新型コロナウイルスリアルタイムPCR法での陽性基準では、陽性コントロールの増幅曲線の立ち上がりが40サイクル以内に見られ、且つ陰性コントロールの増幅曲線の立ち上がりが見られないときに試験が成立する。
これは新型コロナウイルスに限らず、一般的なリアルタイムPCR法の取扱いに基づいて設定されているものである。
ウイルスのコピー数について、検出することができるウイルス量の限界は5コピーである。
【柳ケ瀬裕文 参議院議員】
5コピーにどう意味があるのか。京都大学の宮沢准教授は40サイクルは過剰であり、死んだウイルスの断片や感染力とは関係ないウイルス遺伝子の検出につながる可能性が高く、Ct値は32〜35程度が妥当なのではないかと言っている。
質疑:5コピー持っており、陽性と判定された人がどれだけの感染力を持っているのか
答弁:【佐原康之 厚生労働省大臣官房危機管理医務技術総括管理官】
PCR検査を含めた各種検査については、必要な制度が保たれているものについて、薬事承認又は国立感染症研究所の評価を得て実用化している。
新型コロナウイルス感染症において、どのような感染者が他者を感染させえるのかという、感染性を判断するにあたっては、色々と留意しなければならない。検体採取の際の手技が適切でない場合、あるいは検体を採取する時期が、潜伏期間である場合等、特にウイルス量が少ないと考えられる検査結果の取扱については課題がある。ご指摘の点も踏まえ、さまざまな知見を収集し、適切な検査を行うために必要な見直しを行っていきたい。
PCRの陽性判定は必ずしも感染性を直接証明するものではない。
質疑:【柳ケ瀬裕文 参議院議員】
PCR検査で陽性判定されたからといって、その人に感染力があるとは言えないということか。
答弁:【佐原康之 厚生労働省大臣官房危機管理医務技術総括管理官】
PCR検査の陽性判定=ウイルスの感染性の証明ということではない。
【柳ケ瀬裕文 参議院議員】
PCR検査で陽性判定がされれば、本来はCt値と他の症状、CT検査をすることによって陽性を判定すれば良いのだが、検査数が多く、現状はPCR検査で陽性陰性のどちらかで分かれてしまっている。
陽性判定がされてしまうと10日間の隔離となり、社会経済上大きな影響を受けていると思う。
質疑:【柳ケ瀬裕文 参議院議員】
PCR検査の陽性者で感染性がない可能性がある人はどれくらいいると想定されるか。
答弁:【佐原康之 厚生労働省大臣官房危機管理医務技術総括管理官】
ウイルス量と感染性を示すデータについては必ずしも明らかではない。
ウイルス量が一定より少ない場合、培養可能なウイルスが検出されず、感染性のある可能性が低いと考えられている。
具体的なウイルス量については、さまざまな研究がある。
米国においては、Ct値が33〜35程度より高い場合、培養可能なウイルスがほとんど検出されなかったとの報告がある。
日本においては、Ct値が概ね30以下では培養可能なウイルスが検出されることが多いとの報告もある。
他方、どのような感染者が他者を感染させえるのかという感染性を判断するにあたっては、潜伏期間である場合等、特にウイルス量が少ないと考えられる検査結果の取扱いについて慎重に取り扱っていく必要があると考えている。
【柳ケ瀬裕文 参議院議員】
つまりPCR検査で陽性者と判定された方でも感染力がない人たちがたくさんいる可能性がある。
そもそもの目的は感染拡大を止めることにある。
遺伝子の保持者を特定しようとするのではなく、感染力を持っている人を特定して、社会活動を遠慮いただくためにある検査である。
今の検査のあり方でいいのか、考えなければいけない。
海外でも問題視され、英米でのメディアでもPCR検査で陽性とされたものの中で実際に感染している者は少ないのではないかという疑念の声が上がっている。海外ではCt値が34以上だと感染性ウイルスを排出しないと推測できるという論文も発表されている。
実際に台湾ではCt値が35より低い者のみを陽性と判定している。
未知のウイルスに対し、厳格な基準を設定されたのも理解できるが、知見が積み重なり、5/29に公表された第15回新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の資料、「患者のウイルス量と感染性に関する国内外の知見」では、ウイルス量が低く、検出可能な範囲では、ほとんど培養陰性、ウイルス分離はされないということが書かれている。
これにはCt値が35を超えたら感染力がないという知見があると紹介されている。
日本感染症学会もこの問題に注目し、10月に発表した「COVID-19検査法及び結果の考え方」では、「Ct値が高い場合には、たとえ遺伝子検査が陽性であっても、その検体から感染性を示すウイルス分離がされにくくなることに注意する必要がある。また、遺伝子検査陽性が必ずしも感染性ありとはならない可能性がある。」としている。
新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長尾身さん自身も日本内科学会の雑誌のインタビューでは、Ct値は35ぐらいがいいのではないかと言っている。
本来の検査目的にかなったものとなるように、感染検法におけるCt値の変更など、感染能力のある人を特定できるように、検査を見直していく必要があるのではないか。
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