2021年3月26日、日本看護協会HPより、「2020年病院看護実態調査結果」の内容が公開されている。
今回のデータは2019年度のものであり、新型コロナウイルス感染症が蔓延し始める2020年1月〜3月が含まれ、看護師の離職率へ影響しているのか気になるポイントである。
看護師の離職状況について着目し、離職に繋がった理由についても考えてみる。
看護職員の離職率
既卒採用者(新卒ではない看護職経験者)の離職率(2019 年度):16.4% → 1.3ポイント減少(前年比)
正規雇用看護職員:11.5% → 0.8ポイント上昇(前年比)
新卒採用者:8.6% → 0.8ポイント上昇(前年比)
●正規雇用看護職員の離職率を病院ごとに算出すると、離職率20%以上の病院は21.2%と前年度(10.4%)より倍増。
●上記の離職率は2019年度(4月1日~2020年3月末)の入職・退職状況に基づき算出。
新型コロナウイルス感染症流行初期(1~3月)の影響が及んだ可能性もある。
設置主体別看護職員離職率
●正規雇用看護職員の離職率が相対的に高い病院は
個人:20.3%
その他公的医療機関:17.7%
済生会:14.9%
医療法人:14.4%
●新卒採用者の離職率が相対的に高い病院は
個人:20.8%
済生会:11.3%
私立学校法人:10.2%
医療法人:10.0%
●既卒採用者の離職率が相対的に高い病院は
個人:31.9%
医療法人:18.8%
その他の法人:17.2%
都道府県別看護職員離職率
●正規雇用看護職員の離職率は
東京都:14.9%が最も高く
千葉県:14.3%
兵庫県:14.2%
大都市部で高いのは、従来通りの傾向だった。
新型コロナウイルス感染者の症例数(2020年3月31日公表分)を見ると
東京都:感染者78例
千葉県:感染者4例
兵庫県:感染者12例
となっており、この時点では新型コロナウイルス感染者の症例数と離職率が比例している状況ではない。
参考:新型コロナウイルスに関連した患者等の発生について(3月31日公表分)|厚生労働省
●新卒採用者の離職率は都道府県ごとに3.1~12.7%、既卒採用者の離職率は5.4~26.8%までのばらつきがある
病棟の正規雇用看護職員の月平均夜勤回数
●夜勤形態が二交代制のみの病院では
平均夜勤回数:4.7回(前年比+0.3回)
三交代のみの病院では平均回数が:7.8回(前年比+0.3回)
●平均夜勤回数が三交代制で8回超、二交代制で4回超となっている病院割合の推移は
三交代制・8回超の病院割合:30.9% → 前年比でほぼ横ばい
二交代制・4回超の病院割合:66.9% → 前年比で12.4ポイント増加
●夜勤形態・月平均夜勤回数(2020年9月実績)、病院ごとの正規雇用看護職員の離職率(2019年度)の分布では、
二交代制:夜勤4回超の病院が4回以内の病院よりも離職率が高い → 離職率20%以上の病院の割合が約3割(28.2%)
三交代制:夜勤8回超の病院が8回以内の病院よりも離職率が高い
今回の調査結果(2019年度時点)では、新型コロナウイルスの症例数と離職率が必ずしも比例していないことから、やはり根本的な看護師の勤務形態による離職によるものが目立った。まず個人で運営される病院での処遇を改善し、看護師が働きやすい環境を作り、それが一般化されることで離職防止や看護師不足解消に繋がると考える。
新型コロナウイルスの蔓延から一年以上経った今、前回紹介した医療従事者の処遇改善が求められる状況はもってのほかであり、医療従事者の処遇、勤務形態の改善は最優先されるべきではないか。
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