『トータルライフケア訪問看護ステーション』を都内に展開する株式会社トータルライフケア(以下、トータルライフケア)は、訪問看護・リハビリ・訪問入浴・整骨院・メディカルフットケアなど多角的にサービスを展開しています。平成9年に東京都世田谷区で創業以来、平成29年現在は訪問看護ステーションを世田谷区・大田区・目黒区・杉並区に5拠点設置。東京都内で着実にその規模を拡大しています。
LALANURSEではトータルライフケアの関係者の方々へのインタビューを実施。全2回の特集記事として、2週に分けて公開します。
第1回となる今回は、株式会社トータルライフケアの代表取締役、西海奉成さんにその想いを伺います。
(第1回/全2回)
目次
山梨から東京へ
— ご自身のキャリアについて教えてください。
「私の生まれは山梨で、大学に行かない者もまだ多い時代でして、大学に行ったとしても、山梨県の中に就職して何をやりたいというのが見えていなかったんです。
ただ私は漠然と人のためになる何かをしたいという気持ちではあったので、鍼灸の勉強をしたいということを高校の進路指導の先生に言ったら、『理学療法士・作業療法士というリハビリの免許の道がある』ということをたまたま言われて。ただ、進路の先生もそれ以上詳しいわけではなく、理学療法士・作業療法士の学校への進学実績は一人もないという状態でした。でも、そういう道があるんだったらということで受験し、合格して、理学療法士の道へ進みました。
理学療法士の学校を出て国家資格を取った後、多くの者は3年から5年ほど大学病院に勤めます。そこで修行することで急性期、整形、脳外、神経難病など、どんな疾患の方にも対応できる理学療法士になれるということで、私も最初から3年は大学病院へと思っていました。
その後は鍼灸の学校に通うために東京まで出てきて、学校の学費も必要でしたので、個人病院のリハビリの技師長として大脇病院に勤めました。3年の大学病院の生活を経て、いきなり4年目で技師長という立場になったんです。周囲も皆私より経験のない理学療法士だったり、資格のない者を指導しながらだったりで、10年やってきました」
理学療法士は少なかった
「私が理学療法士の資格を取ったのは今から30年以上前ですが、当時はまだ人が少なかった。東京に出てきた当時は、病院に理学療法士が一人入るとその病院の中にリハビリテーション科ができるという時代だったので、私もかなり引っ張りだこで入りました」
西海さんの理学療法士免許証のナンバーは5000番台。西海さんが生まれた昭和40年に日本で法律(理学療法士及び作業療法士法)が成立しましたが、それから免許を取得されるまでの20年以上をかけて、この国は5000人しか理学療法士を養成できていませんでした。
「しかし今は、毎年1万人出てきている。かなり理学療法士は溢れてきている状態です。もうすぐ需要と供給のバランスが逆転し、免許を取っても働けなくなるような状況になりつつあります」
病院よりも手厚い治療を提供したい
— トータルライフケアを創業したきっかけを教えてください。
「東京で病院に勤めていた当時は、先程申し上げたように理学療法士・作業療法士の数が少なかった。脳卒中になった急性期の方や大きな骨折をした方など、とにかく今リハビリを実施しないと寝たきりになってしまうという入院患者さま方には手厚くリハビリを提供できたんですけども……一方で外来でいらっしゃる、首が痛いとか腰が痛い、膝が痛いという人。その方たちにとってはかなり深刻な悩みなんですけども、脳卒中でこのまま動けなくなるかどうか、大きな骨折・手術をした後にここでやらないと歩けるか歩けないかの患者さまと比べると、どうしてもそちらのほうに比重が置かれてしまう。
外来患者さまも手を出してあげたらもうちょっと良くなるんだけども、ほとんどが物理療法という、機械で温めたり引っ張ったりという処置で帰ってもらうしか手がない。その方たちには申し訳ないなと思ったんですが、ほとんどの病院がそういう状態でした」
鍼灸や柔道整復師の資格も取得していた西海さんには、東洋医学的な要素を取り入れることで、理学療法士として患者に還元できるだろうという考えがありました。
「そうこうしているうちに、少しずついろんな病院がリハビリテーション科を開くようになり、特に病院で入院患者さんになされる理学療法はかなり充実してきたと感じるようになりました。それだったら独立して、病院ではあまり十分な治療を受けられない患者さまに、病院より手厚い外来治療ができたらより喜ばれるのではないかと考え、接骨院での起業を志しました」
— トータルライフケアの経営理念について教えてください。
「最初は接骨院を作って、部下も職員も伸びてきて、いい会社にどんどんなっていくというイメージがあったんですが、居宅支援事業・福祉用具レンタル・訪問入浴・また訪問看護などの新規事業を始めて、だんだん人が増えてきました。そうすると、忘年会と納涼会以外で私と口を聞いたこともないような職員とか、『あの人は誰?』みたいな形にどうしてもなってきてしまって。
これはちゃんと理念をうたって、その理念のもとに人が集まり、そしてそれに照らし合わせて私ではなく職員が判断して、正しい道を一緒に作る工夫をしなきゃいけないと感じました」
企業が成長する上では、「1・3・5の壁」にぶつかると言われています。西海さんがそれを感じたのは、ちょうど年商1億円を超える頃でした。
「本来は先に作るべきものだったんでしょうけども、そのときに制定した経営理念が『「あなたらしくイキイキと」~すべては地域の皆様のために~』。我々がやってきたこと、これからやっていくことに、みんなが納得してこの方向で一緒に仕事をしていこう、という想いで作ったものです」

世田谷区奥沢にある奥沢訪問看護ステーション。トータルライフケア奥沢中央整骨院を併設する
トータルライフケアの事業展開
— 先程仰られたように、トータルライフケアでは訪問看護以外にも多数のサービスを提供されていますね。いろんな事業を展開をしていく中で、それらが相乗的に上げている効果を教えてください。
「例えば接骨院に来ている患者さまでは、スポーツをして怪我をしたなど、一人で通って治療が受けられる介護保険の要支援よりもっと前の段階の方がいます。そこで信頼関係がしっかり築ければ、その方の両親・祖父母などお身内に何かがあった時、あるいは将来その方自身に介護度がついた時に、弊社のサービスを使いたいと考えていただけるようにもなっていくと思います。
訪問入浴に関しても、弊社の看護師が一緒に行ってそこで状態を見れば、より細かいところまで気づける。
福祉用具に関しては、例えば理学療法士は専門中の専門家なんです。ここに手すりがあればとか、利用者さまの身体機能を見て必要な福祉用具に気づけます。ヒアリング・納品・説明をするのは福祉用具専門相談員なんですけども、普段から見ているセラピストと一緒にやった方がより効果的なものをご提供できます」
— 他の訪問看護ステーションには見られない『メディカルフットケア』サービスを提供し、スクールも開講されるなど力を入れていますね。
「例えば日本のフットケアってすごく皮膚科の医者じゃなきゃ駄目じゃないかとか、看護師がやっていいのかとか、グレーな部分もあるんですけども。どちらかというと、
足の裏のトラブル。昔から、魚の目やたこがあって当たって痛いとか、巻き爪が食い込んで痛いとか、患者さまは病気と捉えていないんです。だから、これを治せば歩行が変わるという発想すら持っていなく、看護師やリハビリにも言ってこなかった。それを我々がちゃんと見つけてあげるということがすごく大切だろうと思います」

奥沢ステーションの2軒隣で、フットケアラボ奥沢を運営している
訪問看護ステーションとしての役目
— 長年訪問看護事業を展開してきた中で、感じている変化はありますか。
「約20年前に訪問看護ステーションを設立した頃は、地域にリハビリを提供する施設というものがなかった。特に私が理学療法士であり、作業療法士の仲間も入ってくれたので、すごく重宝がられました」
しかし、平成18年に一度、訪問看護ステーションからリハビリの免許所持者であるPT・OTらが訪問することに規制がかけられます。その当時はどちらかというと看護師よりもリハビリスタッフに来てほしいという国民の要望があり、需要と供給のバランスから言えば経営者はどんどん理学療法士を雇って訪問させたほうが、ある意味では経営が楽だったそう。その規制は理学療法士の訪問回数を制限するもので、従業員の雇用や仕事の受注も成り立たなくなり、リハビリをメインとした多くの訪問看護ステーションが閉鎖しました。
「訪問看護ステーションという制度は、在宅での看取りの機会を増やすことを大きな命題として国が看護師に与えた制度であって、PT・OTを大量雇用して利潤を追求することは、国の要望している姿とはかけ離れていました。
ただそのときに『やっとPT・OTが家に来てくれるようになったのに、なんで行かせなくするようなことをするんだ』という国民の声が上がりまして、とりあえず制限は緩和されました。しかし看護師の訪問なくPT・OT単独での訪問は認めないという制限は残して今に至ってます」
西海さんによれば、看護師を採用するのに比べればPT・OTを採用することの方が楽なうえ、仕事は看護師の約3倍、リハビリに来ているとのこと。だからといってまたPT・OTばかりが訪問する状態になれば、それは国が目指している方向と違ってしまい、再び規制が強化されて職域を狭められてしまいます。
「現在、弊社は人員配置の比率で『看護師:リハビリスタッフ:ケアマネジャー:事務員=7:7:2:1』を基準としています。7人の常勤看護師がいると、24時間365日、休みを取りながらも重症の患者さんを受けられる。そこにリハビリの知識や技術がある者も同数いて、在宅医療を支えるステーションをつくっていく。それが国が求めていることであり、最終的に国民に最も利益をもたらすことのできる訪問看護ステーションだと思っています」
地域との関わり方:ダンディーエクササイズ
— 地域包括ケアシステムの構築に向けた、地域との関わり方について教えてください。
「サ高住などを作って24時間介護したり、ショートステイに対応したりとか、そういう器で地域を迎え入れてサービスを提供するという体力は持っていません。そこで、地域包括ケアシステムの中で『自助・互助・共助・公助』という考えがあり、我々ができるところの自助・互助には積極的に協力をしています。具体的には何をしているかというと、今この地域で『ダンディーエクササイズ』という活動に立ち上げから関わっています。
奥沢・東玉川地区から始まり、今年からは大田区のモデル事業として田園調布で始めました。運動習慣をちゃんとつくってあげることが医療費・介護保険費の抑制につながることを、今は行政もわかっています。
小学校の少子化で空いている教室などに我々専門家が毎週行くから、興味ある人は集まってくださいと呼びかける。世田谷区内なら幼い子どもたちがランドセルを背負って歩いて行ける範囲に小学校が建っているので、要支援の1・2、要介護の1・2程度の人でも自分の意思で行ける。そこに地域の方が集まって、週一回の体操をして、健康寿命を長くしていける。
この仕組みが作れたら、医療費と介護保険費が抑制されて、人のつながりができて、この地域で最後まで暮らせる。お金のかからない地域包括ケアシステムになるんじゃないかと。だから、弊社のサービスを使わないで済むことに対しては、積極的にボランティアとして出ていきます」
— ダンディーエクササイズの参加者はみんな男性なのですか?
「男性だけです。体操教室を始めると9割以上は女性が集まり、男性は1割弱。続けていくと、男性はみんな来なくなって、女性だけの集団になってしまう。女性っていくつになっても新しいコミュニティを形成し、そこに面白みとかを作れるんですけども、男性は苦手です」
男性の場合、定年退職の直後は働いていた当時の仲間とゴルフなどの遊びに出かけることもあるでしょう。しかしだんだんゴルフも大変になってきて余暇の活動がなくなると、地元を見たらなんにもない――特に働き始めてから地域に移り住んだという人にはこれが顕著です。すると、今さら趣味も友達も作れないという男性が外に出る意欲をなくしてどんどん家にこもっていき、そして朝からお酒を飲んでしまったり、グダグダしたりして認知症や身体機能の低下につながっていくという悪循環が生まれてしまいます。
「そういう方々に、もう一度地域につながってもらい、新たな仲間ができて、身体機能を維持できるコミュニティを作ることが自助・互助につながるだろうということで、男性だけのダンディーエクササイズが始まったのです。
今は百数十人の方が絶えず登録し、毎週40人以上の方が集まって体操をしています。そういったことで身体機能を維持し、新たな仲間ができ、時にはその仲間で茶話会みたいなことをしたり、一緒にお酒を飲む機会をつくっちゃったりして。そういったことを通じて地域につながっていく。それが、弊社ができる地域包括ケアシステムのすごく大切なところかなと思っています」

スタッフへのサポート体制
— 新たに訪問看護に挑戦するスタッフへのサポート体制を教えてください。
「病院や施設でのサービスは、利用者ではなく管理者のルールでやれるんです。サービスを提供する側に全部決定権があって、上から目線になる。入社して最初の3日間の研修できっちり、そこをまず撤廃します。在宅はその方のお城に行って仕事をするわけですから、まず人間的に受け入れてもらうためにマナーをちゃんと身に付けることが必要です。
弊社はTLC STUDIOUSという勉強会を主催していて、外部にも開いて全体で2500人ぐらいの会員がいます。また社内では、小児・神経難病・看取り・認知症・全身疾患などの患者に対応し、施術するスペシャリストを作ろうということで、弊社の医療系の資格を持った者はそのいずれかの勉強会に属して、毎年回っていきます。
あとはせっかくステーションにセラピストとナースがいるわけですから、お互いのいいところ・弱いところを教え合う研修会もやって、フォローしています」
24時間体制を実施する理由
— 24時間体制でサービスを提供する理由を教えてください。
「在宅で看取りを、という国の要望に応えるインフラを整えるために、24時間をやっています。
また、たとえば新しい地域でステーションを設立しましたということでケアマネジャーの会社に営業に回りますと、ほぼ100パーセントから『24時間やってますか?』と聞かれるんです。ケアマネジャーさまからすれば、その人が担当する被介護者が、もし最期の最期をうちで看取りたいとなったときに、24時間じゃないところと契約していたら変えなきゃならないかもしれない。でも今までの人に見てもらいたい。顔もお互いわかっている、信頼関係のあるところで。だからこそ24時間あるところがいいなと考えるので、最初の導入の安心のためにも、全ステーションは24時間にしていこうとは思っています。
— 24時間体制での勤務にはどのようなサポートをしているのでしょうか。
「弊社が24時間体制をしているといっても、24時間の契約をしない人はいっぱいいるんです。『これは24時間の契約をしていつでも看護師が行ってあげられないと在宅ではとても無理だな』と思う人のみ24時間の契約するようにという指示を所長に出しています。奥沢ステーションでは約300名の方とご契約しているんですが、契約する方は毎月5人以上に増えていない。そこに対しても日々のサービスへの信頼関係ができていれば、電話がかかってくるのも平均値にして2ヶ月に一回あるかどうか。出動に至っては、半年に一回とか。そして今日あたり連絡がありそうというのは大体わかるので、その時どう対応するかを決めておけば看護師も安心です。
日々のサービスがしっかりしていれば、営業時間外でしょっちゅう呼び出されて疲弊するということはないんだということをよく伝えています」
育児支援制度について
「看護師の数が不足していて雇用が難しいという情勢でどうやったら雇用に結びつき、離職しないで済むかということを考えると、やはり子育て世代の人が働けるところ。
弊社ではフレックスタイム制を取り入れて、役所に行ったり保育園に送り迎えしたりする時間を作れるようにしています。若い人なら、今日は朝訪問がないからゆっくり来たいとか、逆に夕方訪問がないから早く帰りたいとか、友達と飲みに行きたいとか、映画に行きたいとか。やっぱり時間を約束して訪問する以上、フレキシブルタイムは少ないんですが、柔軟性を持つことで雇用に結び付けられると考えています」
スキルアップ支援について
「弊社の看護師はメディカルフットケアを無料で学ぶことができます。約10ヶ月から1年かけて座学と実技のセミナーを受けて、その後弊社の実技・ペーパー試験を受験し、合格した人にはフットケアセラピストの証を認定します。
その取り組みによってセラピストも足の裏を気にするようになり、弊社の看護師がフットケアに介在することで、足底に異物があって感覚器が鈍くて不安定だったり、胼胝・鶏眼の痛みで体重のかけ方が違っていたりした人たちの日常生活動作が改善した事例もあります」
メディカルフットケアという新たなテクニックを保持することは、看護師としてキャリアアップし、リハビリとの相乗効果も生まれ、やりがいにつながる他にはない特色で求人にも功を奏しているとのこと。
「また従業員が興味を持ったことに関しては、なるべく弊社でサポートをしています。例えば理学療法士で『今、日本で一番呼びたい先生』というような人がいて、従業員からも希望を聞いてそういった先生に交渉し講師としてお招きして、スタッフに聴いてもらうことはあります。外部のいろんな研修でも、費用を補助して行ってきてもらって、学んだことを社内の勉強会で広めてもらうというのもやっているところです」

奥沢ステーションにはスタッフが訪問時に使用する原付バイクが並んでいる
社内イベントについて
— 社内で催すイベントには力を入れているそうですが、その理由について教えてください。
「経営が厳しくなって廃業してしまった病院の話を聞くと、数年前から忘年会も納涼会もやっていないと。なぜやらなくなったのかと聞いたら、『上司と飲みに行ったってつまらない、毎年同じようなところで飲んだってつまらない、職場の人と飲んでもつまらない』と。そんな職場はどんどん活性化しなくなって、患者さんも来なくなって、結局それでつぶれていきます。
嫌だとか、頻度とかは考えなきゃいけないですけれども、やっぱり仕事以外で職員が集まって、家族が集まって、楽しかったという気持ちを作っていくことが団結力を生み、いい仕事ができる。
今は納涼会・忘年会は当然ですけども、他にもバーベキュー・ソフトボール大会・ワイン会とかやることがあったり。ちょうど6月には20周年の社員旅行で沖縄へ行きました。やっぱりそういうところは大切にしていかなければいけないと思っています」
農業への取り組み
— 社内での取り組みとして『TLC AGRI PROJECT』と称し、西海さんの地元・山梨の耕作放棄地を借り受けて農業に挑戦しているそうですね。
「私も子どもの頃は手伝うのが大嫌いで、まさか自分がこんなことに手を出すとは思わなかったんですけども。ただ、旬の野菜を無農薬で作るって本当においしい。これを持ってきて、皆さんにお配りしたら喜んでもらえるんじゃないかというところからスタートをしています。弊社のサービスのご利用者さまへ実際にお持ちしたところ、非常に喜ばれています。
これは私の考えなんですが、介護をしなければならないお宅は行動範囲がどうしても狭くなってしまう。元気なうちは一年に一度ぐらい温泉旅行に行っていたかもしれないが、今は買い物も近所だけで済んでしまう。そういった方々に季節感を味わってもらいたいな、と。
作物はジャガイモと枝豆がメインなんですけども、『トータルライフケアさんからジャガイモ届いたわよ』『これおいしいのよね』『もう7月なんだ、夏なんだね』とか、そういう季節感を味わっていただきたいということで始めたんです。
— 農業への取り組みについて、従業員の皆さんからの反応はいかがでしょうか。
「職員もやっぱり大変です。なんでこんなことするのかなと思われていたし、収穫した大量のジャガイモを持っていけと言うと、持っていくのが面倒くさいというような畑を手伝わない職員も以前はいたんですが……今は作物を持っていくと家族が喜ぶことを本人も知っているから、作物が届くと自分で仕分けしていくような感じになってきたので、良かったかな。もっともっと大きくしてやっていきたいなと思っています」

6月に行われたジャガイモ収穫の風景
トータルライフケアの事業展望
— 最後に、西海さんが思い描くトータルライフケアのこれからのヴィジョンについて教えてください。
「今は訪問看護ステーション全体のレベルがもっと上がって、病院で看取られなくても在宅で大丈夫だという社会をちゃんと作らなければいけない。弊社がしっかりすることで、全体がレベルアップしてくれればと考えています。
中長期的なものでは、東京23区全体を網羅して20ヶ所のステーションを設置し、全ての従業員比率を7:7:2:1のモデルにし、指名をしていただければ安心して在宅で看取れる状態を作りたい。
今、看取り事例の報告もかなり受けているんですが、皆さんトータルライフケアに看取ってもらって良かったと喜ばれていらっしゃいます。そしてこの看取りをうまくしていくことで看護師が自信を付けていける。トータルライフケアでは、やりがいを持って看護師冥利に尽きる仕事ができると感じられるようになります。
また、ダンディーエクササイズのように弊社のサービスを使わないで済むようなことをどんどんやることで、我々がサービスしているエリアは地域全体の介護度の進行率が平均値と比べていい数値が出ているとか、介護保険の利用度が少ないとか、人口に対する費用も少ないとか。我々の活動が功を奏して、喜んでいただける結果にしたい。
『質の高い医療サービスを提供し、安心と信頼をお届けすることで、ご利用者様およびご家族様に喜んで頂く』、『在宅ケアの充実と訪問看護による看取りを実践することで社会保障費の抑制に繋げ、地域や国に貢献する』、『厚遇を持って社員の努力に応えるとともに、働きやすい環境を整えることでその生活を未来に渡って幸せにする』。これは西海さんが提唱し、トータルライフケアが目指していく『3つのWIN』です。
「社会保障費が削減されることで、国や国民が喜ぶ。今は、訪問看護ステーションを作っても仕事が一切もらえなくて困っているというところもいっぱい出てきているんです。弊社の場合は信用があるからしっかりと仕事がもらえて、そして看護師という資格として、病院や施設よりも高水準な対価を達成することで、職員もウィンを勝ち取る。『3つのWIN』を勝ち取る経営をしていきたい。一番大切に思っています」
