訪問看護における在宅での医療処置 2018.12.05

訪問看護とは、病気や障害を持つ人が住み慣れた地域や自宅で、その人らしい療養生活を送ることができるよう、支援するサービスです。訪問看護ステーションから訪問看護師が自宅を訪問し、看護ケアサービスを提供します。高齢化が進む現代において、そのニーズはますます高まっていくと予測されますので、看護師としては病院勤務以外の働き方のひとつとして、そのあり方を知っておくべきでしょう。
今回は、訪問看護における在宅での医療処置について、その基本をご紹介します。





在宅での医療処置、病院との違い

在宅での医療処置の方法は、基本的には病院とほとんど同じです。医療の発達した現代では、多くの医療処置が自宅でもできるからです。
ではその違いは何かというと、医療職でない本人や家族が医療処置を担う度合いが大きいことにあります。処置が必要となったとき、病院ならいつでも医師や看護師が処置を行うことができますが、在宅では看護師が常駐できません。つまり本人や家族による自己管理に頼ることになります。訪問看護師がいないときでも適切な処置ができるように、訪問時に方法を指導しておくのです。
また、訪問看護は療養者本人の意志を尊重する部分が大きいという特徴を持っているため、本人の希望に沿った処置を柔軟に施します。
医師から説明されている内容を前提に、医療処置をどこまで導入するとどういう生活となるのか具体的に説明します。その上で、本人や家族の意向を汲み取るコミュニケーション能力が、病院の看護師よりも訪問看護師に求められる要素となります。

①医療処置の担い手が違う

入院していれば、医療処置は必ず医師や看護師、理学療法士、薬剤師といった専門家が行います。在宅の場合は、訪問看護師がいる時間以外は本人や家族がその処置を行います。

②医療機器が違う

病院での吸引や吸入はたいてい中央配管方式となっていますが、在宅では小型の吸引器や酸素供給機器を使用します。

③使う物品が違うことも

病院では専用の物品を使用しますが、在宅なら病院から処方される医療材料のほか、コストなども考慮してドラッグストアで販売されているものや、ときには手作りして使うこともあります。

④外出など生活の違い

入院中にはほとんど病院外に出ることはありませんが、在宅医療の療養者はより頻繁な外出を望む人も多くいます。その支援を考えたとき、例えば医療機器を外さずにカートなどに積んで出かける方法を指導する場合もあります。

呼吸機能のケア

呼吸機能に不全が生じると、生活の質が低下するとともに、息苦しさから不安が生じ、精神的にも弱ってしまう場合が多いです。そこでケアでは息苦しさを取り除き、穏やかな療養生活を送れるように支援を行います。
慢性呼吸不全の程度によっては、在宅酸素療法や人工呼吸器の使用を検討します。訪問看護師はそれらで使用する機器についても知識を持ち、適切に管理していく必要があります。

①排痰・吸引ができるように

気道に痰がたまると、咳が出やすくなり、場合によっては呼吸困難の原因になります。窒息による事故を防ぐためにも排痰は重要です。
予防のためには、環境づくりが大切です。室内を適度な湿度に保つことで、気道粘膜の乾燥を防ぎ、痰を排出しやすく、たまりにくくするのです。そのためには、療養者の寝室などに温度計と湿度計を備え、加湿器などを使いながら湿度を調整していきます。
また、口腔内が乾燥しないように普段から水分を十分にとってもらいます。口腔ケアで潤す場合もあります。
自力で排痰できない療養者には、口腔内吸引または鼻腔内吸引を行います。卓上に置くタイプの小型電動式吸引器を家庭で購入してもらいます。介護保険や医療保険の適用外となりますが、身体障害者手帳があれば、助成制度による給付が受けられる場合もあります。

②気管カニューレの管理

気管切開をしている療養者の場合、気道を確保するために留置されたチューブである気管カニューレは、命に関わる重要な呼吸経路です。交換は月1回を目安に医師によって行われますが、その管理や、気管切開部のケアなどは日々行われなければなりません。訪問看護師は、気管カニューレ内部に付着した痰の吸引を行ったり、介護者である家族が適切に管理できるよう支援したりする必要があります。
ケアの際は、切開部にただれや出血、肉芽などの症状がないかチェックし、適切に対処します。
また、緊急時に家族が気管カニューレを交換しなければならないときに備え、主治医から挿入方法を指導してもらうことも重要です。予備のカニューレを用意しておきましょう。

③在宅酸素療法(HOT)

在宅酸素療法(HOT)とは、慢性の呼吸器疾患や心疾患、神経疾患などによる低酸素状態が起こったときに、機器を使って酸素を供給する治療法です。息苦しさを緩和するため、生活の質を保つ目的に貢献します。
この療法も療養者自身や家族によって自己管理できる必要があります。通常は入院中に管理方法を指導してもらえますので、訪問看護師は正しく管理できているか確認する役割を担い、場合によっては軌道修正します。
在宅では、設置型の酸素濃縮装置を使用します。電気によって空気中の酸素を濃縮して供給するため、連続して使えます。
外出時に使えるものとして、酸素ボンベがあります。圧縮した酸素が入ったボンベで、専用のキャリーカートなどに乗せて移動させることができます。こちらは使用時間が限られますが、電源がなくても利用できます。

④人工呼吸療法

自発呼吸だけでは酸素が補えない慢性呼吸器疾患を抱える人には、人工呼吸療法を行います。鼻マスクを装着させ、人工呼吸器によって圧をかけ呼吸を助ける「NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)」です。通常NPPVは夜間の睡眠時のみに使いますので、それ以外の時間は声を出したり食事したりすることも可能です。
一方、神経筋疾患などで呼吸ができない人には、気管切開をして行う「TPPV(気管切開下陽圧換気療法)」が施されることがあります。生命維持装置の役割を果たしますので、24時間装着する必要があります。
訪問看護師はこれらの機器が正常に動作しているかをチェックし、使用が適切に行われるよう指導していく役割を担います。特にTPPVでは短時間でも酸素の供給がストップしてしまうだけでも、命にかかわることを認識し、安全にサポートしていくことです。

訪問看護は本人の希望に沿った処置を柔軟に施します。



経管栄養のケア

食事を経口摂取できない療養者には、人工的に水分や栄養を補給する方法を検討します。胃に直接栄養剤を注入する「胃瘻」や、鼻腔に挿入したチューブから栄養剤を注入する「経鼻経腸栄養法」などがあります。最初にこれらの方法を療養者本人や家族に説明し、意思決定を支援します。

①胃瘻(PEG)

胃瘻を選択した場合、まず外科手術により胃と体表を孔でつなぎます。カテーテルによって栄養剤を胃に流し込みます。在宅では本人や家族が胃瘻を管理します。こちらも、日常的に栄養補給ができるよう、訪問看護師が管理方法を指導します。当然、カテーテルや栄養剤の種類と扱い方はしっかり理解し、適切な指導ができるようにしておきましょう。
胃瘻を設置してから瘻孔が安定するまでの1~2週間は、体調が変化しやすいため特に注意が必要です。胃や食道の異変を身体が感じて発熱や嘔吐を起こすことがあります。胃瘻の周りには肉芽やただれができることも見逃せません。栄養剤の注入速度によっては下痢や便秘になる場合もあります。
毎日適切なケアを行うことで、清潔を保ち、感染などが起こらないように注意します。

②中心静脈栄養法(TPN)

がんの手術などで腸管を切除した場合や、腸管の機能が著しく低下している場合は、中心静脈にカテーテルを留置し、そこから高カロリー輸液を注入する療法「中心静脈栄養法(TPN)」が選択される場合があります。在宅でこれが行われる場合は、「在宅中心静脈療法(HPN)」と呼ばれます。
HPNの場合、カテーテルの主流は、「完全皮下埋込式カテーテル(CVポート)」です。輸液を投与する時以外は管を外して生活することができます。
CVポートに輸液を入れるときに使用するヒューバー針は、週に1回程度交換する必要があります。交換は主治医または看護師の役割となります。
介護者(家族)はポンプで接続された輸液バッグから、輸液をヒューバー針のコネクタ部分につないで、1日に1回栄養を補給します。
訪問看護師はここでも、物品の扱い方は適切か、感染対策が万全に行われているか、輸液の製品と容量が守られているかなどをチェックしながら、指導していく役割を担います。

排泄経路のケア

在宅療養者の中には、排泄に難を抱える場合もあり、「膀胱留置カテーテル」や、人工の排泄口である「ストーマ」を保有している人も多く見られます。これらのケアが適切に行われるよう、療養者本人および介護者である家族に、適切に指導する役割を、訪問看護師が担います。

①膀胱留置カテーテルのケア

尿閉や尿路の閉塞などによって排尿ができない場合や、陰部の皮膚炎などがあり排泄による汚染が懸念される場合などに、尿道からカテーテルを挿入して膀胱から尿を体外に排出する処置が取られることがあります。膀胱留置カテーテルは合併症のリスクも高いため、できるだけ短期間にとどめるべきです。早めに抜去できる可能性があるなら、いつできるのかを検討する必要もあります。
このカテーテルを留置している間に注意すべきは尿路感染です。ですからできるだけ長期間の留置は避け、定期的に交換します。また、1日1回は陰部を洗浄し、清潔を保ちます。
訪問看護師はこうしたカテーテルの管理、陰部洗浄を指導しながら、早期の抜去の可能性を探ることが求められます。

②ストーマケア

大腸がんの手術などで、排泄が適切に機能しない場合に施されるのが、手術により腹壁に設けられた排出口「ストーマ」です。便を排泄する「消化管ストーマ」と、尿を排泄する「尿路ストーマ」に分かれます。消化管ストーマは、造設される位置により「回腸ストーマ」と「結腸ストーマ」に分けられます。
ストーマを付ける療養者は、腹部から排泄されるということに最初抵抗を感じる場合がほとんどです。自分で排泄をコントロールできないという事実に悲観的になる人もいます。そのような心理的不安を取り除くことが重要です。
訪問看護師は、療養者本人の不安をしっかり受け止め、これからの生活に何ができるか、ポジティブな言葉とともに心理面でもケアを援助していくことが求められます。
ストーマの装具は、ストーマ袋と面板が一体となった「ワンピース装具」と、別々になっている「ツーピース装具」に分けられ、それぞれ扱い方が違います。療養者に施されたストーマのタイプに応じて、交換や廃棄が自分でできるよう指導します。こうした指導は通常病院で行ってもらえるものですが、そのときは心理的に受け入れ難い状態にあって詳しく覚えていない場合もあり、やはり訪問看護師による丁寧な指導が必要です。

ストーマケアについては、「皮膚・排泄ケア認定看護師」の専門分野となるので、訪問看護師がその知識を備えていることは大きなメリットとなるでしょう。そうでない場合は、近隣の認定看護師を頼り、連携しながらケアを進めていくのも一手です。

参考:「ナースのためのやさしくわかる訪問看護」(ナツメ社)






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