前回の記事、「【新型コロナウイルス】PCR検査陽性判定=ウイルスの感染性の証明ではない」のニュースの中で、日本感染症学会が10月に発表した「COVID-19検査法及び結果の考え方」といった資料が紹介されている。
その資料が示している、PCR検査の特徴や感染結果の判断等について、見ていく。
PCR検査が示す新型コロナウイルス感染症の可能性とは?
【PCR検査の特徴】
・新型コロナウイルスに特異的なRNA配列をRT-PCR法などで増幅し、検出する。
・数十コピーのウイルス遺伝子を検出できるほど感度が高い。
・検査時間が比較的長い(1-5 時間)、専用機器・熟練した人材が必要、高コスト。
・概ね感度90%以上、特異度はほぼ 100%と考えてよい。
・遺伝子検査法では増幅に必要なサイクル数(Ct値)などをもとに、検体中に存在するウイルス遺伝子数を推定する。
【PCR検査の注意点】
低いCt値で陽性になる場合にはウイルス遺伝子が多く、逆に陽性となるまでに要するCt値が高い場合にはウイルス遺伝子数が少ないと判断する。
Ct値が高い(ウイルス遺伝子数が少ない)場合には、たとえ遺伝子検査が陽性であっても、その検体から感染性を示すウイルスが分離されにくくなることに注意する必要がある。
Ct値は検査系(機械・試薬等)によって数値が変動するので、数値の一般化が出来ないことにも留意するべきである。
鼻咽頭拭い液の遺伝子検査陽性は数週間にわたって持続するものの、ウイルスを分離できるのは発症から約1週間後までとなっている。
【検査結果から感染性を評価するための検査の考え方】
長期間の遺伝子検査陽性を示す患者において、いつまで隔離を行う必要があるのか(感染性はいつまで続いているのか)。
症状が軽快したのちも、数週間にわたって遺伝子検査が陽性を示すことが報告されている。
●感染性を評価するポイント
・COVID-19 発症後の日数とウイルス遺伝子数(Ct値)の関連
発症時点でのCt値は20前後であったものが、日数が経過するごとにCt値は高くなり(ウイルス遺伝子数が減少)、発症9日の時点でCt値は 30.1 となっている。
・発症からの日数とCt値およびウイルス培養結果の関連
Ct値が高くなるに従い(ウイルス遺伝子数が減少)、検体からのウイルスの分離率が低下している。また、発症からの日数が経つにつれてウイルスの培養率が低下し、約10日後にはほとんどウイルスが培養されなくなる。
・検体別の発症後日数とウイルス培養の関連および発症後の抗体陽転率との関連は、ウイルスの分離は発症後8日目までであり、その後のウイルスの分離はみられていない。また、ウイルスの分離は喀痰および咽頭拭い検体でみられているものの、糞便からは分離されなかったとされている。
発症後5日目頃から抗体価の上昇がみられだし、発症8日目には約80%の症例で抗体が陽性となり、それ以降ではウイルスの分離がみられないという結果が出ている。
これらの成績は、ウイルスの分離(すなわち感染性)は発症からの日数およびウイルスRNA量に強く依存している可能性を示すものである。
【退院基準の考え方】
遺伝子検査がなかなか陰性化しないことで、無症状であっても退院させられない症例の増加が問題となっている。
しかし、遺伝子検査陽性が必ずしも感染性ありとはならない可能性が示唆されている。
このような背景の中で、遺伝子検査の陰性結果とともに、発症および症状消失からの日数を参考に退院を判断するの導入が検討されている。
現在のCOVID-19患者の退院基準は、有症状者の場合、発症から10日を経過して3日間無症状の場合には遺伝子検査などを行わずに退院を許可することとなっている。
さらにもう1つの基準として、症状軽快の24時間後、24時間間隔で2回の遺伝子検査陰性をもって退院可能としている。
一方で無症状者に対しては、検体採取から10日間経過した場合、あるいは6日間経過ののち24時間間隔で2回の遺伝子検査陰性をもって退院可能としている。
無症状陽性者の感染性を正しく評価することは難しいが、1日でも早く安心して退院させられるようなエビデンスが求められている。
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