東京都目黒区にある『東邦大学医療センター大橋病院』は、目黒区・世田谷区・渋谷区を医療圏とする都市型&地域密着型の病院です。日々進歩する先進医療サービスの提供だけでなく、家庭的で温かみのある病院として地域住民に信頼される貴重な存在でもあります。
LALANURSEでは今回、東邦大学医療センター大橋病院の看護師長、堀孔美恵さんへのインタビューを実施。看護師長としての役割や、理想とする看護のあり方などについてお話を伺いました。全2回の特集記事として「前編」に引き続き、今回「後編」を公開します。
(第2回/全2回) 第1回はこちら

東邦大学医療センター大橋病院 看護師長/堀孔美恵さん
様々な知識を身に着け、看護師長へ
-現在看護師長という役割を担う堀さんの、これまでの経歴について教えてください。
「まず、東邦大学付属の医療短期大学で看護師免許を取得しました。卒業して以来ずっと大橋病院に勤務しています。10年目になる時、1998年に学位授与機構で看護学士を取得しました。私もキャリアアップを意識しており、よりレベルの高い看護業務に関わりたいという考えがありましたので、看護教員になるための学校にも通いました。ただ、当時は人に教える立場には苦手意識があったので、教員の道には進まず、そのまま看護師主任になったという経緯があります。その後、個室の混合病棟に勤務した際、がん患者様との出会いをきっかけに、がん看護のより専門的な知識を身につけたいという意識を持ちました。そこで看護大学の大学院に進学し、2011年にがん看護専門看護師を取得。その後は病棟外来での勤務、緩和ケアチームの専従看護師としての勤務を経て、2016年に看護師長になりました」
-看護師長として働くことになったきっかけは?
「この患者サポートセンターが2017年にオープンするタイミングを前に、そこの看護師長になってほしいという声をかけていただきました。それまで勤務していた緩和ケアチームでは、退院支援などにも重きを置いていました。患者様が病院を出て地域でどのように過ごされているか、スムーズに退院して住み慣れた地域で療養しながら生活するためにはどういうことが必要なのか。そういう知識も多少身につけていましたので、サポートセンターで人をまとめる役割を与えてくれたのかもしれません」

がん患者様との出会いをきっかけに、がん看護のより専門的な知識を身につけたいという意識を持った、と語る掘看護師長。
大局から物事を見つめる能力
-看護師長という重責を担う上で必要となる資質はどんなところでしょうか?
「落ち着いて人の話を最後まで聞けることですね。話の途中からついつい端折って「だから」って言っちゃいがちだと思いますが、やっぱり一緒に働く人たちの話を最後まできちんと聞くぞという態度を見せないと、おそらく自分が言うことも受け取ってくれません。相手を大切にして尊重しなければいけない、そこは意識しなければと思っています。
看護師はどうしてもひとつの物事にのめり込んでしまいがちですが、組織をまとめる者がそうなってはいけません。引いて見る、俯瞰して物事を見るということを意識し、組織を大局的に、冷静に見つめたうえで判断しなければと思っています」
自分の理想とする看護を、人に伝える
-これから看護師長を目指す人へのアドバイスがあったら教えてください。
「若い看護師にとって、実践での看護って、すごく楽しくてやりがいのある仕事だと思います。でも看護師長は、そういう人たちをどうサポートしていくか、どうしたら患者様のためにいい仕事ができるのか、を考えることが必要になります。それによって違った景色が見えてきます。自分が理想とする看護を自分で実践するのではなく、その思いを人に話したりして伝えていきます。ある程度経験を積むことで、『今だったらこの人にこの言葉を渡せばうまくいくかな』というようなイメージができるようになります。自分がやりたいことを他の人に託して繋げていく役割は、自分で実践するのとは違った面白みがあるなと感じているところです。看護師長を目指すのであれば、そういったことを看護師歴の浅い段階から考えてやっていければ最良ですが、まあそれでも若い人は、自分のやりたい看護というのをまずは突き詰めて欲しいですね。しっかり突き詰めて自分のスタイルが確立できれば、その後もっと上の役割を任されたとき、少しゆとりを持って物事を見るチャンスを作れるのではと思います」
患者様を生活者として扱いケアしていくこと
-これからの医療に求められる看護師像について教えてください。
「現在は高齢化が進む社会である一方、病院の数は減らされています。それを踏まえ、患者様たちが元の暮らしにスムーズに戻れるよう、『生活者』として患者様をケアしていくことが必要です。看護師という専門職として、身体を見る目という専門的な面ももちろん必要です。それに加え、病気などを抱えながら生活するうえで、どんなことに不便さや不自由さがあるのか、患者様やご家族にわかりやすく説明する責任が出てきます。アセスメントと説明力です。一般的に『コミュニケーションが大切』と言われていますが、コミュニケーションもケアになるわけです。通り一遍に話すのと、その人のことを思いながら話すのとでは、相手への伝わり方が違います。同じ話すにしても、心を込めて説明できるような看護師が一人でも多く育ってほしいですね。
ますます複雑化する医療業界において、看護師の役割はすごく広がっています。地域で活躍したり、企業に行ったり、自分で起業してしまうナースだっています。自分の思う道を、いろいろチャレンジしてもらいたいと思います」
