がん化学療法における
副作用とその対処法③ 2018.09.19

がん患者の増加に伴い、化学療法においても年々新しく様々な治療薬が開発されています。治療がより複雑化する中で、患者と直に接する看護師もそれに対応していかなければなりません。
抗がん剤の種類によって、どんな副作用がいつ、どのように発現するのか。その傾向を知っておくことはもちろん、患者にもわかりやすく説明し、不安を取り除いてあげることが看護師の重要な役割です。より理解を深めることは、症状が現れても冷静に対処できる能力に繋がります。
前々回前回に引き続き、よく現れる副作用のうち脱毛、神経毒性、倦怠感の3つの症状と、薬剤投与中や投与直後に現れる過敏症について見ていきましょう。





副作用の対処法⑨脱毛

見た目の変化に大きな影響を及ぼす脱毛。肉体の健康にはさほどダメージはないものの、とりわけ頭髪が抜けることは、患者の心理的な不安感に繋がります。ですから、心理面でのケアや不安を軽減するための看護援助も特に心がけなければなりません。

脱毛は一般的に、抗がん剤治療を開始してから2~3週間で始まり、1ヶ月もすると目立つようになってきます。頭髪だけでなく、まつげや眉毛、陰毛など全身に及びます。抗がん剤による脱毛を予防することはできませんが、一過性のものが多く、半年ほどで新しい毛が再生してきます。

【脱毛に関する看護の留意点】
  • 治療開始前から患者に情報提供することが必要
    その際、最後の抗がん剤投与から3ヶ月~半年後には回復してくるということも説明する
  • 髪の毛を清潔にすることを心がける
    洗髪は低刺激のシャンプー・リンスで優しく洗い、強いブラッシングやパーマを避けるよう指導する
  • 洗髪の回数は脱毛に関係しないため、脱毛を気にして間隔を開けるのではなく、清潔を保つように指導する
  • 抜け毛が目立つときは、粘着テープなどでこまめに掃除する
  • 外出時など必要時には、抜け毛が目立たないような方法、バンダナを巻いたり、ウィッグ(かつら)も使用したりで きることを伝える

参考:がん(癌)治療の副作用 脱毛の対処法|がんを学ぶ( https://ganclass.jp/confront/associate/hair03.php




副作用の対処法⑩神経毒性

抗がん剤による副作用のひとつに神経毒性があります。末梢神経障害とも呼ばれ、手足のしびれ感から始まり、痛み、知覚が鈍化、灼熱感、足首が垂れるといった症状を起こします。進行するとボタンがかけにくい、物がうまくつかめない、文字がうまく書けないといった手足の機能低下や歩行困難となることもあります。
抗がん剤のうち、オキサリプラチンやパクリタキセル、硫酸ビンクリスチンなどで発現しやすい副作用です。これらの薬剤が、がん細胞の増殖を抑制するために毛細血管を攻撃することで起こります。
現在効果的な予防法はありませんので、症状を和らげたり、症状が出ても生活に支障をきたさないような看護をしたりすることが求められます。
神経毒性を起こしやすい抗がん剤の種類を把握し、わかりやすい説明と対策をアドバイスすることで、患者の不安を取り除きましょう。

【神経毒性に関する看護の留意点】
  • 症状が出ていないか観察とヒアリングを心がけ、症状の部位や程度、広がりを継続して観察する
  • 手足を動かすとしびれが軽減できるため、入浴時のマッサージや適度な運動をするよう指導する
  • 感覚が鈍くなっていることによるケガや事故がないよう注意する
    コンロやストーブなど熱いものの近くでは火傷の注意が必要
  • 手先の感覚が鈍くなっていることで、ボタンをかけられないなど細かい作業が困難になる場合があるため、必要に応じて介助する
  • 痛みが強くつらい症状が出ている場合は、医師・薬剤師と相談のうえ鎮痛剤の投与を検討する

参考:神経毒性 – がん情報サイト「オンコロ」( https://oncolo.jp/dictionary/neurotoxicity)





副作用の対処法⑪倦怠感

倦怠感とは、全身がだるい、やる気や元気が出ないといった、患者が不快感を主観的に表現する症状を指します。
抗がん剤は、がん細胞のみならず正常な細胞にもダメージを与えることが知られています。損傷した細胞が早く回復しようと多くのエネルギーを使用するため、身体の中のエネルギーが消耗され、倦怠感に繋がると考えられます。
しかし、倦怠感の原因は一つに絞り込むことが難しく、抗がん剤の副作用による食欲不振や下痢、脱水などの身体的要因、さらにそれらが心理的・社会的な要因と複雑に絡み合って発生するといわれています。それでも、がん化学療法では実に80~90%の患者に発生すると報告されている、非常に起こりやすい副作用なのです。
倦怠感を訴えるときは、微熱や発汗、貧血、無気力などを伴う場合が多いです。これらが二次的な症状を引き起こし、総合的なだるさ、集中力の欠如、記憶力の低下などを引き起こします。

症状は抗がん剤投与から3日後ぐらいで現れ、2週間後ぐらいまでにピークを迎えます。
複雑な要因が起こす倦怠感は、確立した予防法はありません。しかし、身体的な症状をしっかりアセスメントし、原因を推測し、そこから全身の状態を管理していく必要があります。また、心理的・社会的アプローチからも症状の回避や緩和が可能となる場合があります。まずは詳細な観察とヒアリングが重要となってきます。

【倦怠感に関する看護の留意点】
  • 倦怠感がどの程度か把握する
    具体的にどんな症状が出ているのか、日常生活にどんな支障が出ているのかを調べる
  • 食欲が低下している場合が多いため、栄養士と協力し、食欲増進できるよう対策を立てる
    フルーツやゼリーなど摂取しやすいものを積極的に食べてもらうようにする
  • 脱水症状が放置されることを防ぐため、水分を十分に取ってもらう
  • 気分転換を図るため、散歩など適度な運動を勧める
    リラクゼーションやマッサージも効果的
  • 家族の理解を得られるよう、わかりやすい説明を心がけ、協力を仰ぐ
    症状をひとりで抱えないことは、心理面で重要となる
  • 下痢であれば止痢剤や整腸剤、痛みに対しては鎮痛剤など、必要な薬剤の使用を検討する
    ぐっすり眠れるよう、睡眠薬の使用も検討する




抗がん剤投与中・投与直後に現れる過敏症

がん化学療法における看護を行うにあたり、これまで説明してきた代表的な副作用のほかに、抗がん剤投与中や、投与直後に起こりやすい症状、特に過敏症について知っておく必要もあります。
程度は異なりますが、短期間のうちに重篤となり、患者に大きな苦痛を与える可能性があります。症状の発現に備えた準備と、看護体制を整備しなければなりません。

  • アレルギー症状
    アレルギーは、異物に対する身体の防御システムが過剰に反応することで起こります。初めて投与する際には症状が出なくても、数回目に症状が出てくる場合もあります。中でも、薬剤投与から5~10分以内に起こる全身反応「アナフィラキシー」が進行すると、末梢循環不全に至る危険な状態「アナフィラキシーショック」が発現する可能性があることを理解しなければなりません。
  • インフュージョン・リアクション
    インフュージョン・リアクション(急性輸注反応)は、分子標的治療薬の投与によって起こりうる症状です。投与直後から24時間の間に出現します。発熱、悪寒、悪心、頭痛、疼痛、皮膚掻痒感、発疹といった軽いものから、アナフィラキシーや気管支痙攣、血圧低下など重篤なものまで幅広く現れます。
【過敏症に関する看護の留意点】
  • アレルギーを起こす抗がん剤にどのようなものがあるのか、事前に知っておくことが求められる
  • 症状が起こってから対処するのではなく、いつでも酸素吸引が使えるようにするなど、物品や救急薬品も備えておく

がん薬物療法の副作用とその対応

参考:がん薬物療法の副作用とその対応(http://www.hosp.niigata.niigata.jp/img/about/torikumi/archives/tanaka_151009.pdf

参考文献:「ナースのためのやさしくわかるがん化学療法のケア」(ナツメ社)





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