最期を穏やかに迎えるサポート
「エンドオブライフケア」の考え方 2018.08.01

「エンドオブライフケア」は、病気や老いによって人生の終焉を迎える時期に提供される医療・看護・介護のことで、終末期医療に関する概念の一つです。
わかりやすく言うと「いかに穏やかに人生の最期を迎えるか」という観点で医療・看護・介護などを行うサポートのことです。
現代は高齢化社会といわれて久しく、同時に慢性疾患を抱える患者が増大し、より良い終末期ケアの在り方が模索されている状況です。多くの人が穏やかに人生の最期を迎えるためには、従来の「緩和ケア」や「ターミナルケア」だけでは十分といえません。
また、病院など医療機関だけでなく、自宅や介護施設での「看取り」も増えており、患者や家族の生活に合わせた終末期ケア体制を確立することが求められています。このような社会的課題に対応すべくエンドオブライフケアという考え方が重要となっています。





エンドオブライフケアが脚光を浴びる背景

2025年には団塊の世代すべてが後期高齢者となり、「超高齢少子化多死時代」が訪れるといわれています。日本の総人口が減少する中で高齢者は増加するため、高齢化率は上昇を続け、2035年には3人に1人が高齢者となることが予想されています。
厚生労働省では、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の実現により、たとえ重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるようになることを、これからの地域社会がめざすべき姿として掲げています。
そこで、エンドオブライフケアの体制を整備し、質を向上させることこそ、地域包括ケアシステムを確立するための鍵となります。
現在は病院での看取りが約8割となっていますが、今後病院のキャパシティが限界を迎えることが予想されています。そのため自宅や高齢者施設などでの看取りに順次移行できるような環境の整備が必要です。
こうした状況ですから、エンドオブライフケアに対応できる人材の需要は高まっているといえるでしょう。

患者による意思決定の尊重

現代の医療においては、患者の意思による決定権が尊重されるようになっています。これはエンドオブライフケアにおいても重要な考え方です。
終末期に携わる看護師などの人材は、さまざまな選択を迫られることになりますが、患者およびその家族と価値観を共有しながら看護の計画を立てる必要があります。
また、患者自身が判断する能力を失った場合にどんな医療行為を受けるかという意向を前もって示す「アドバンス・ディレクティブ」も尊重されます。
このような価値観の共有が、患者・家族の意思による「最善の選択」が可能となるのです。
そのために大切にすべきなのが、会話です。
患者の「自分はどうしたいか」という意向は医師と面談する際だけではなく、普段の看護・介護の現場での何気ない会話の中でも、面と向かっては言いにくい本音が聞けることもあります。また、病棟の場合、患者の家族が来て本人を交えて会話することがありますので、そのときに両者の意思を聞けることがあります。
病状の変化や時間の経過などによって、意思が変わる場合があることも想定しておかなければなりません。
死を目前にすると、患者や家族には、ジレンマや葛藤が芽生えることも多いのです。倫理的視点を持ちながらこうした問題を調整していけるよう支援することが重要です。
さらに、患者や家族だけでなく、医療スタッフ側も含めて様々な人の感情が揺れ動くものです。ぶれない看護観や死生観も身につけておくことがエンドオブライフケアの中心で調整する者の資質として求められます。
参照:エンド・オブ・ライフケアとは | エンド・オブ・ライフケアの考え方 | 千葉大学大学院 看護学研究科 エンド・オブ・ライフケア看護学

「エンドオブライフケア」は、終末期医療に関する概念の一つです。


人生の最終段階におけるケアで心がけること

どれだけ医療が発達しても、誰もがいずれは死を迎えます。自らの死が近いことを悟ると、多くの人はそれを覚悟したうえで、静かで穏やかに最期を迎えることを望みます。エンドオブライフケアでは、この「穏やか」な最期となるようなサポートも重視されています。では、どんなケアを行えば穏やかな最期を迎えられるのでしょうか。
そのためには、患者本人の様子をしっかり観察することが大切です。
採血や血圧測定などによってわかる数字を注視することはもちろんですが、通常は終末期において数字は悪くなる一方。それに、数字だけが穏やかさを伝えてくれるわけではありません。
そこで重要となるのは、患者の表情です。
たとえ数字が悪くなっていったとしても、表情が穏やかであれば、それは正しいケアができているといえるでしょう。逆に、数字が安定していたとしても、表情に険しさや苦しみが見られれば、ケアの方法を見直さなければならないと考えましょう。
ただし、どんな状態が「穏やか」と感じるかは人それぞれです。
心落ち着く環境、家族との会話、昔の思い出話、気がかりな問題を残していないかどうかなど。それらを、本人と話し合いながら、様子を伺いながら、クリアできる部分はできるだけサポートすることが大切です。

エンドオブライフ・ケア援助士の認定制度

エンドオブライフケアの考え方は年々重要視されており、様々な団体が看護師を対象にした研修を実施しています。
また、一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会では、「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」を実施しており、養成講座の受講を終えた人を「エンドオブライフ・ケア援助士」として協会認定しています。

養成講座は2日間の集合研修で行われ、その学習要素は以下の通りです。

  1. 課題背景(2025年問題に備えて)
  2. 人生の最終段階に共通する自然経過
  3. 苦しむ人への援助と5つの課題
  4. 意思決定支援
  5. 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  6. 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  7. 1対1で対応する(ミクロ)

※2日間の集合研修に参加できないという人向けに、動画で学べるeラーニングコースもあり(ただし2日間のうち2日目の演習への参加は必須)

受講後もフォローアップ学習会に参加したり、各現場で個人の実践を積み重ねたりして、継続的に学んでいくことが推奨されています。
エンドオブライフケアを基礎から体系的に学ぶことができるため、終末期ケアに関わる看護師にとっては、視野に入れておきたい認定制度となるでしょう。
参照:援助者養成基礎講座 | 一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会




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