看護職の働き方改革その2
夜勤・交代制勤務の負担軽減 2019.01.23

看護という仕事は、患者の生命と健康を守るという社会的な意義があり、やりがいのある職業です。それと共に、判断や処置によって人の生命を左右することがあるなど、ストレスや緊張感を伴います。また、看護職という仕事の性質上、24時間365日、交代勤務が避けられません。夜勤・交代制勤務や長時間勤務などが原因で、看護師の過労死や、夜勤時間帯における医療事故の発生も報告されています。過労死に至らなくても、過酷な労働が原因となって体調を崩したり、生活との両立ができなかったりするために離職する看護師もいます。
患者の生命と健康を預かる重要な役割を果たすには、看護師自身が安全で健康に働くことができなければなりません。 日本看護協会ではこうした考え方を元に、「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」を取りまとめて公開しています。夜勤・交代制勤務の負担が少しでも軽減されるよう、ガイドラインを参考に働き方を見直してみましょう。





組織で取り組む対策

医療従事者は、患者の生命と健康を守るための質の高いサービス提供は重視しながらも、自分たちの安全と健康が疎かになりがちでした。しかし、そのような働き方は疲労や注意力の低下により、医療事故発生などのリスクにも繋がりかねません。また、多くの看護職が行っている夜勤・交代制勤務は、自身の健康に悪影響があることも明らかにされています。看護師が安全で健康に働き続けられる職場環境を整えることは、組織としての重要な責務です。

①適切な労働時間管理

夜勤に従事する時間が長ければ長いほど、その負担が大きくなります。夜勤を行う看護師には、
・勤務時間前後の時間外勤務をさせない
・長時間の夜勤をさせない
・休日数を増やす
・所定労働時間を短縮する
といった労働時間管理が重要となります。

②人事労務管理

働き方を変えるためには、経営層や管理職だけでなく職員も一丸となり、自分たちに合った働き方を検討することが必要です。その際には、現在の業務のやり方に非効率的な部分がないかを見直し、業務の効率化を図ることも重要です。

まずは看護単位の業務内容を、日単位、週単位、月単位、年単位で把握し、見直します。日単位の業務は、24時間の中で、いつ、何を、どのように行っているか、時間軸に沿って整理します。業務の集中により人手不足となっている時間帯がいつで、その時間帯の増員ができるか、ほかの時間帯に移行できる業務はあるかといった検討を行います。
見直した結果、そもそも業務量に見合った人員が配置されていないことが明らかになれば、人員配置数を適正化する必要があります。例えば、朝・夕の配膳時間や、検査や手術室への搬送が多い時間など、業務が集中する時間帯には短時間勤務者などを配置して増員するなど、業務量に合った人員を配置するよう工夫します。

人員配置は1年を通して予測を立て、見直す必要もあります。例えば産休や育休、介護のための休業制度はすでに一般的となっていますので、それらを利用するスタッフも出てきます。心身の疾患により長期休業が必要となるスタッフのほか、様々な事情での突然の退職も発生するでしょう。これらに伴う減員は避けられないだけでなく、年度途中の補充採用となると容易ではありません。これらの要素に鑑みると、年度初めに職員定数を満たす配置をするだけでは十分な対応といえません。特に夜勤可能なスタッフ数の減少は、スタッフ全体の夜勤負担が増えるという悪循環に直結します。そこで、前年度実績を踏まえながら、年度はじめのうちから年度途中の退職者などを見込んだ計画的な配置をする必要があります。

しかし安定的な人員配置を行おうとしても、急な入退院などにより予想以上に業務量が増えたり、職員に突然の病欠者が出たりすることで、業務量と職員数とのアンバランスが生じることもあります。こうした突発的な状況に対応するため「リリーフ体制」の導入も検討します。大規模な病院でないと難しいですが、他部署から必要な人数を必要な時間(30分単位など)、要請に応じて派遣できるようにする仕組みです。リリーフスタッフがスムーズに業務を進められるよう、物品の収納場所・方法を統一するほか、業務の標準化を検討します。施設内で統一した看護手順を作っておくことも必要です。リリーフが何をするかあらかじめ決まっていれば、リリーフに出るスタッフもリリーフを受けるスタッフも、安心して業務に就くことができるのです。

こうした取り組みのプロセスを、職員のモチベーションを高める機会に活用していくことも大切です。

③一律から多様性への変換

負担軽減策をうまくマネジメントするコツが「一律から多様性への変換」です。 職員は、本人の年齢やライフステージ、キャリアアップの方向性、健康状態などによって働き方が変わります。それらを考慮せず一律にマネジメントしようとすれば、人によっては就業継続が困難となったり、健康を害してしまったりする人もいるかもしれません。
看護管理者にとって夜勤者の確保は悩みどころですが、全員に一律の夜勤回数を課すのではなく、例えば各人が可能な夜勤回数で勤務できるようにしたところ、人によっては夜勤回数が少なくても、全体では夜勤可能な看護師が増え、むしろ夜勤者の確保が容易になったという病院の実例もあります。
それぞれ可能な勤務時間帯を選択してもらうことで、自分で勤務形態を選ぶという意識が芽生え、より自律的な働き方につながります。諸外国では、個々のスタッフが個別の労働時間や勤務時間の契約を結んでいるケースが多くあるのです。

患者の生命と健康を預かる重要な役割を果たすには、看護師自身が安全で健康に働くことができなければなりません。



個人で取り組む対策

看護師が自分の心身の健康に気を配り、能力を十分発揮できる状態で仕事に臨もうとする意識は、安全で質の高い医療・看護を提供するのに不可欠です。
まず、労働安全衛生法で定められた、6カ月に1回の健康診断を必ず受けるようにしましょう。その上で、特に夜勤・交代制勤務に従事する看護師は、日ごろから適度な運動とバランスの良い食事、睡眠の質に気を配りながら、健康管理に努めることが重要です。

①友人や家族、周囲の人とのつながりを大切にする

自分が夜勤をしていることを周囲の人に話し、昼間に休息を取る必要があることなどを理解してもらいます。その上で、家事などの役割分担を行います。また、精神面での健康を維持するため、家族や友人と過ごすことのできる時間を確保しましょう。友達は看護師だけでなく、いろいろな職業や地域の人々との交流を持つことも大切です。できれば同じように交代制勤務を行っている友人を作るといいでしょう。混雑の少ない平日昼間にショッピングに出かけるなど、交代制勤務ならではのメリットもあります。

②リラクゼーションでストレスを解消する

ストレスを貯めこまないよう、自分に合ったリラクゼーション方法をいくつか知っておき、普段から実践します。

    <リラクゼーション方法の例>
  • 心身をリフレッシュできる趣味を探す
  • 良質な睡眠を取る
  • 適度な運動をする
  • 緑の中を散歩する
  • 気になる出来事でも、時にはうまくやり過ごす
  • 深呼吸する
  • 友達と会話する

③夜勤前の過ごし方に工夫をする

夜勤前には特に十分な休息・睡眠を取ってから仕事に臨むことが大切です。不規則な時間に起床・睡眠を繰り返すことが多い夜勤・交代制勤務者には、質の良い睡眠を取るための工夫が必要になります。

    <夜勤前の過ごし方のポイント>
  • 騒音の無い静かな部屋を寝室にして眠る
    できれば寝室は眠り専用の場所にする
  • 寝室は夏は25℃、冬は15℃、湿度は年間を通して50%くらいが最適
  • 睡眠中の発汗や体温低下に適応する良質な寝具を選択する
  • 就寝前の行動パターンを決めておき、パターン化することで眠りへのスイッチを入れる
  • なかなか眠れないときは、好きな音楽を聴く、ぬるめのお風呂に入るなど、リラックスできるようなことをする
  • アルコールにはリラックス効果があるが睡眠が浅くなるため、睡眠薬代わりの飲酒はやめる
  • ニコチンには覚醒効果があるため、眠る前の喫煙は避ける
  • 1日3回規則正しくバランスのとれた食事をする
  • 適度な運動により体力をつけ、ストレスを緩和する
  • 就寝前の激しい運動は入眠を妨げるため避ける

④夜勤中の過ごし方に工夫をする

夜勤においてもできるだけ能力を落とさず仕事をするために、知っていた方がよいことがあります。特に仮眠と食事に工夫をすることです。
仮眠は2時間以上取ることが望ましいが、少しでも眠ったほうがよいとされています。仮眠後はしばらくぼんやりとすることがあるため、仮眠を取らないほうがいいと考える方もいますが、それは逆に疲労をため込むことに繋がります。きちんと覚醒することができるまでの時間を考慮して起床時間を決めましょう。
食事は出勤前にきちんと済ませておけば、夜勤中に無理に食事をする必要はありません。ただし、水分は十分に摂るように心掛けましょう。休憩時間に食事をとる場合、なるべく消化の良いものにします。一度にたくさん食べると眠気が襲ってきますので、何回かに分けて食べるようにしてください。
深夜3時から早朝6時は、特に集中力が途切れやすい時間ですから、重要な仕事や、細かい注意が必要な仕事をどの時間帯に行うかなど、業務配分ややり方を工夫しましょう。

⑤夜勤明けの帰宅途中の注意点

夜勤からの帰宅途中は特に注意が必要です。勤務時間内は集中力を高めようと緊張感を持って働いていますが、終了後はホッとして眠気が高まるので、気が緩まないよう注意が必要です。
夜勤明けは、自分が思っているよりも判断力が鈍り、反応に時間を要するようになっています。特に夜勤明けで車を運転する方は、そのリスクを知っておきましょう。
まず、運転する前に少し身体を動かして、覚醒度を高めるようにします。
自分が疲れを感じている時や、眠気を感じている時、運転はなるべく避けるべきです。仮眠を取ってから帰るか、公共交通機関、タクシーの利用を考えましょう。
運転中眠くなったら、車を止めて休憩を取るか、いったん車外へ出て気分転換をすることが大事です。
冬はエアコンの暖かさで眠気が誘発されます。エアコンをかけすぎないよう注意します。

⑥夜勤明けの過ごし方に工夫をする

帰宅後は、なるべく早くに一度眠ります。家事などが気になるかもしれませんが、一度睡眠を取ったあとで行えばいいのです。長く寝すぎると夜の睡眠を妨げるので、2時間程度にとどめましょう。その後日中は普通に生活をして、夜はいつもどおりか少し早めの時間に眠りましょう。
小さな子どもがいる場合は、夜勤明けの時間に自分の睡眠が十分に取れなくなりがちです。そこで、保育施設で夜勤明けの時間にも子どもを預かってもらえないか確認します。

⑦カフェインや薬の使用について

お茶やコーヒー、ドリンク剤に含まれるカフェインには、眠気覚ましの効果があります。ただし効果は人によって著しく異なります。このカフェインの作用と副作用をきちんと確認したうえで、自分に合った使い方を心がけます。
カフェインの作用としては、覚醒や集中力の向上などのよい効果があります。一方、摂りすぎると胃部不快感や頭痛、神経過敏などをきたす場合があります。成人では1日に300mg程度の摂取が適正量だといわれています。
コーヒー1杯の効果は飲んで20分後くらいから現れ、効果は3~4時間持続するといわれています。勤務終了時間と効果持続時間を考えて摂取することにしましょう。効果の出現時間を見越して仮眠の前に飲み、仮眠終了後の目覚めをすっきりとさせることもできます。

睡眠をコントロールするものとしては、睡眠薬の使用が考えられます。
しかし睡眠薬の種類によっては作用時間が長く、夜勤前の仮眠時に服用すると起きられなくなったり、勤務中にまで眠気が持続したりする危険性があります。使用にあたっては、しっかり休息を取るために使用する場合と、仮眠目的の場合との区別が必要です。
また不眠の症状が出たからといって安易に睡眠薬に頼るのではなく、医師や管理者、カウンセラーなどに相談し、必要に応じて夜勤のない働き方への移行も検討してもらう方法もあります。

参考:夜勤・交代制勤務に関するガイドライン


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