『和光会グループ』は岐阜県岐阜市を中心に、医療・福祉の両面でサービスを提供しています。92年(本記事公開時点)の歴史を持ち、現在は病院・診療所・訪問看護ステーション・老人保健施設・介護事業所など多岐に渡る事業所を展開。その事業所数は岐阜県内で50を超え、地域包括ケアシステム構築の担い手として注目を浴びているグループです。
LALANURSEでは、そんな和光会グループで、特に地域と接点の多い訪問看護ステーションに勤務する関係者の方々をインタビュー。国が在宅医療を推進する中、注目が高まる「訪問看護師」というキャリアにスポットを当て、全2回の特集記事として、2週に分けて公開します。
第2回となる今回は、前回に引き続き『訪問看護ステーション和光』の所長(訪問看護師)・原さんと訪問看護師・尾崎さん。加えて、訪問リハビリ統括リーダーの理学療法士(PT)・小森さんと広報企画課課長・安藤さんの4名にお話を伺います。
写真左から:訪問看護ステーション和光所長・原さん、訪問看護師・尾崎さん、PT・小森さん
(第2回/全2回) 第1回はこちら
和光会での一日のスケジュール
— 一日の仕事の流れを教えてください。
原さん(以下、敬称略):常勤の就業時間は8時半から17時半になります。始業時は事務所に集まってミーティング。そのあとそれぞれ訪問に行きます。昼頃に一度戻り食事をして、午後も訪問へ行き17時半前に帰ってくるのが基本の流れです。
尾崎さん(以下、敬称略):朝8時に患者宅に訪問する日が週1回程度、夜19時からの訪問も10日に1回くらいの割合でありますが、あとは定時のことが多いですね。土日も看護師二、三人は出勤がありますが、そこはお互いフォローしています。緊急の携帯電話を持って帰る日が週に1回あり、その日は夕方の17時半から翌日の朝8時半までの待機になります。その間に緊急の要請があればお宅へ直接訪問します。
小森さん(以下、敬称略):PTも基本的に同じようなシフトです。夕方戻ってから記録や計画書、報告書などを作成します。カンファレンスや担当者会議をすることもあります。

スタッフ間の細かな情報共有
— 訪問看護ステーション和光では、一人の利用者に対して何人のスタッフが関わるのでしょうか?
原:患者さんの状態にもよりますが、一人につき四人くらいのスタッフが関わります。関わるスタッフが多いので患者さんが混乱しないように気をつけています。慣れてくると「いろんな人に来てもらって楽しいわ」と言ってもらえることもあります。
— 複数のスタッフが関わっていく上で、スタッフ間の連携のコツを教えてください。
原:患者さんは、看護師とセラピストの違いはあまりわからないので、生活の中で困っていることを普段の会話で吸い上げて、看護師ではなくリハビリの専門的な視点があった方がいいと判断したときには、セラピストにつなげています。
小森:ターミナルや難病の方のリハビリでは特に看護師と連携することが多いですが、リハビリをして気になったことを、その日のうちに看護師や、場合によっては担当のケアマネジャーや相談員も話すようにしています。
原:患者さんの生活全体で考えなければいけないことは、ケアマネさんを中心として患者さんのご自宅でもカンファレンスを開かせてもらっています。

和光会で働くこと
スキルアップ
— 訪問看護師として求められる能力はどんなものですか?
原:人とのコミュニケーション能力ですね。子育てをして地域とコミュニケーションする機会が多い主婦層の方は、自然に高めやすいかもしれませんね。もちろんスキルも必要です。在宅酸素や人工呼吸器、ストーマケアなど、現場に同行して覚えてもらっています。
— 訪問看護師としてのスキルを身につけるために、グループからの支援はありますか?
安藤さん(以下、敬称略):リスクマネジメント研修など事業所運営に必要な知識を習得する研修はグループとして実施しています。
原:個人情報や法令遵守などは法人内の研修で学んでいます。他にも必要な外部研修は日勤で受講できるなど研修制度は充実していると思います。
ドクターがそばにいる
安藤:グループの理事長は、在宅専門のクリニックの医院長も務めているので、訪問看護師の皆さんとカンファレンスも積極的にしていますね。
原:よく訪問看護師がドクターに電話するのが怖いと聞きますが、うちはそんなことないですね。
安藤:研修とはまた違い、ドクターと症例検討を積み重ねられていることもスキルアップにつながっているのではないでしょうか。
原:患者さんが亡くなったあと、振り返りのカンファレンスやグリーフケアとしての訪問を理事長が率先してやっていて、そこに訪問看護師も加わっています。亡くなられた後『最後これで良かったのかな』という気持ちで終わらせないで、そういったプラスアルファがあることで、『良かったんだ、じゃあまた今度こういうふうにやろう』と思える。やってきたことが間違いじゃなかったという一つひとつの積み重ねがスキルアップにつながっていると思います。
幅広く地域を支える事業展開
— ドクター、しかも在宅医療の専門医がグループ全体を統括していることは、訪問看護ステーションを単独で営む他の事業体よりも強みになりますね。
小森:病院・老健・在宅というところが全部しっかり整っている環境の中で働けることはいいところだと感じます。これから求められる地域包括ケアシステムに向けてスキルを上げていければと思っています。
原:病院や診療所に始まって、介護事業所や有料老人ホーム、老人保健施設と本当にいろんな事業所があるから、看護師としても多岐にわたって仕事ができると思います。ここを極めたら次はこっちに行ってみようとか。訪問看護ステーションもその一つです。自分らしくキャリアが積める環境だと思います。

利用者も職員も、みんなを笑顔に
原:これからは、より患者さんや利用者さんのニーズに合ったサービスをしないと生き残れない時代だと思います。
安藤:そうですね。和光会グループの理念は『みんなを笑顔に。』です。どうしたら皆さんが笑顔になるかというところでサービスを考えることをめざしています。その中には職員も含むので、職員を笑顔にするためにどうすればいいかも真剣に考えていますね。
— スタッフの働きやすさを支援する制度を教えてください。
原:男性スタッフも育児休暇を取っていますよ。
小森:僕も奥さんが出産した次の日にお休みをいただいて。やはり急に準備もないまま病院に運ばれて出産するわけで、何かものを持っていかないといけないとか、そういった面で急に対応をさせていただけたのは、ありがたかったです。
— 託児所や学童保育をグループの事業として展開していて、スタッフも利用できるそうですね。
原:はい。私も上の子が5年生、下の子が3年生のときまで学童保育を利用していました。朝、子どもと一緒に出勤してきて、一日子どもを預けて一緒に帰る人も多いです。実際、託児所があったのは私が和光会グループに入った理由の一つでした。
尾崎:私も最初、新卒で大学病院に就職しましたが、結婚・出産すると一年後には正社員で復帰するのが条件だったので子育てと仕事の両立が厳しいなと思い退職しました。和光会グループは託児所があるので、そちらを利用して、子育てしながらまた看護師の仕事をすることができました。敷地内に病児保育もありますしね。
原:スタッフがどこも足りないので、なるべく休まずに済むように病児のお子さんもグループ内の施設で看る体制があります。小さいお子さんを持ったスタッフにとって、そういう制度は非常にいい仕組みだと思います。また、うちの事業所では、子育て中の方に非常勤で入ってもらうこともあります。訪問は融通が利かせやすい面があるので、時間もその人の都合に合わせて訪問1件だけということもありますね。無理かなと思わずに相談してもらえるといいと思います。
尾崎:融通は本当に利かせてもらっています。

— 地域包括ケア時代の到来に向けて取り組んでいることはありますか?
原:いつかは在宅も病院みたいに、24時間しっかり管理できる体制にならないと地域の生活に合わせた医療展開ができないと思うので、その地盤づくりをやっています。例えば、スタッフには11時出勤で20時退勤とか、7時に訪問してちょっと早く上がれるシフトとか、そういった勤務の組み方を試して慣れてもらったりもしています。
安藤:託児所も今までは日曜日やっていなかったのを、試験的に実施したりしているところです。地域の方に喜んでもらえるサービスを提供したいという想いと、職員の支援をうまく両立していきたいと思っています。今後、ますます訪問看護師の方を必要としていらっしゃる方は増えてきますので、利用者さん・患者さん目線でお仕事をしたいと考えている看護師の方には、ぜひ和光会に来ていただきたいですね。

訪問看護ステーション和光の事業所がある寺田ガーデン地区。在宅療養支援病院や介護老人保健施設などを擁する地域包括ケアの一大拠点(写真提供:和光会グループ)