外来看護師とは看護外来で働く看護師のことです。医療・福祉の未来を見据えて看護師のエキスパート化が求められる中、看護外来は看護師が自立・専門的な役割で能力を発揮することが期待されています。看護外来での看護師の働き方について紹介します。
今注目される「看護外来」とは
看護外来とは、通院患者に対し看護師が主導して療養支援を行うケア外来のことです。がん摘出時にストーマを造設した患者の日常的な管理サポートや糖尿病患者の血糖値管理と合併症予防などから、生活習慣病の原因を未然に防ぐ禁煙指導まで、看護外来のニーズは徐々に広がりはじめています。
その登場の背景には、入院患者の在院期間が短縮され、療養上の問題が解決する前に退院となるケースが増えてきたことにあります。高齢化社会における患者の増加で医師は常に多忙になり、従来の外来受け入れ体制では、在宅で医療依存度の高い外来患者に対して必ずしも十全な対応ができていないのではないかという声がありました。そこで看護外来の新設が増加し、外来看護師の役割に注目が集まっています。
代表的な看護外来 |
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ストーマ外来 |
フットケア外来 |
糖尿病療養支援外来 |
緩和ケア外来 |
がん看護外来 |
禁煙支援外来 |
スキンケア外来 |
リンパ浮腫外来 |
排尿ケア外来 |
生活習慣病外来 |
慢性腎不全外来 |
家族外来 |
高齢者看護外来 |
リエゾンナース外来 |
外来患者数の推移と看護外来の位置づけ
下図を見ると、平成14年以降、1日あたりの外来患者数で65歳以上が占める割合の増加が顕著であることがわかります。この状況を見越せば、看護外来を設けて外来患者の受け皿を広げることの必要性は明白です。
外来部門に所属して医師の診療補助をすることが従前の外来看護師の業務でしたが、看護師が直接的に外来患者の医療サポートを行える看護外来は外来看護師の新しい働き方として位置づけられます。

推計外来患者の年齢階級別の推移グラフ(出典:中央社会保険医療協議会 総会(第345回)議事次第 外来医療(その1)について(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000150605.html))
看護外来が期待される分野の例:ストーマ外来
ではここで、ストーマ外来の例を見てみましょう。
最近では、大腸がんの摘出時にストーマを造設した患者でも早くて1週間ほどで退院します。手術を挟んだ短い入院期間内では、最も大事な術後のセルフケアについて、必要最低限の説明をして終わることになりかねません。
また、腹腔鏡手術が行われるようになってからは、小腸にストーマを造設するケースも増えてきました。大腸に比べて小腸は水分量が多く、管理も難しいところです。排泄物の漏れや皮膚障害、合併症などの不安を、患者は日常生活で抱えることになります。
国立がんセンターの統計によると、がんは日本人の死因の1位となっていて、その中でも大腸がんによる死亡者数はここ30年で約3倍に増加しました。一方で医療技術の進歩やオストメイト対応トイレの普及もあり、ストーマ造設後に社会復帰するためのハードルは下がっています。そこで生活に寄り添って長期・定期的なフォローを必要とする患者のために、看護外来としてストーマ外来を設置して退院後のケアを行う病院が増えています。
ストーマ外来で行う診察内容例 |
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退院後の装具の交換状況確認、ストーマ周辺の皮膚状況の診察 |
皮膚トラブルの解決、治療、予防指導 |
洗腸法の指導 |
新しい装具などの情報提供 |
他にも糖尿病など自宅で継続できる医療ケアが増加する中、在宅看護の広がりと同時に看護外来のニーズも確実に増えていくでしょう。

左下のピクトサインがオストメイト対応を示す多目的トイレの案内
外来看護が診療報酬で評価される項目
看護外来には診療報酬の請求が認められています。例えば、ストーマ外来の場合は「在宅療養指導料」「ストーマ処置料」が算定できます。
「在宅療養指導料」は人工肛門・膀胱などの器具を装着してその管理に配慮を要する患者に対し、個別に医師の指示に基づく30分以上の療養指導・診療記録を行った場合に算定できるものです。月1回に限り、プライバシーの配慮された場所で行うことが算定条件とされ、1回170点(1700円)と設定されています。これは外来診療の場で看護師が在宅医療指導を実施した場合にのみ算定される診療報酬です。
その他にも糖尿病外来や禁煙外来など、看護に対する評価として診療報酬が算定できるようになったことで、専門外来の設置が増加しています。
外来看護(看護外来)が診療報酬で評価される項目 |
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摂食機能療法 |
生活習慣病管理料 |
生活習慣病管理料/自己測定血糖値指導加算 |
外来化学療法加算 |
ウィルス疾病指導料 |
喘息治療管理料 |
ニコチン依存症管理料 |
糖尿病合併症管理料 |
がん患者カウンセリング料 |
リンパ浮腫指導管理料 |
外来看護師の役割
患者とのコミュニケーションは外来看護師が果たす大きな役割です。看護外来では、医療処置に関する専門知識や技能と同等に、患者の病態と治療方針、治療内容を総合的に判断し管理する洞察力と、ご家族や医療チームに伝達するコミュニケーション能力が不可欠となります。急性期患者は緊急を要しているため、治療に必要な情報も協力的に提供してくれることが多いですが、外来ではそうもいきません。
例えば、症状が落ち着いて自分自身では快復したように感じている患者に体調を詮索をすると、気分を害されてしまうこともあります。退院後の生活は外来で来院した時にしかうかがい知れないため、さりげないやりとりで医療に対する本音を聞き出し、限られた時間内で患者が安心して療養に向きあえるよう最大限に配慮していくことが重要です。
このような患者とのコミュニケーションスキルは、一朝一夕で身につくものではありません。外来には相応のキャリアがある看護師が配置され、中でも専門性を身につけた看護師が看護外来で能力を発揮することになります。コミュニケーションは外来看護師の大きな役割です。
まとめ
従来の考え方では、看護師の役割は医師の補助に徹するものというイメージが先行してきましたが、病気を抱えて日常生活を送る人々と接する機会の多い看護師という職種は、在宅医療支援を円滑にするプロフェッショナルとして注目され始めています。
チーム医療が見直され、また医療と介護の連続性が重視される中で、看護師の役割は再評価に値するものと位置づけられています。それは診療報酬の改定で看護の評価が新たに設けられるという形で表れ始めています。
病棟での経験は看護師としての技術や観察力、コミュニケーション能力のベースになります。そのスキルを身につけた上で看護師が次に進めるステージとして、外来という現場を考えることができます。看護外来は、外来看護師の中でも特に高いスキルが求められるものになっていくでしょう。
今後、看護外来の開設はますます増えていくと予想されます。そこで勤めるためには意識的に自己学習を重ねていく必要がありますし、専門看護師・認定看護師の資格を取得することも自分自身の強みになるでしょう。キャリアアップはもちろん、社会貢献の意識や向上心が強い人には特にやりがいのあるフィールドです。

患者との信頼関係を築いて、日常生活のケアをする看護外来の仕事