いよいよ2017年も終わりが近づいてきました。年の瀬は、この一年を省みて次の一年につなげるための整理をするにはちょうどいい機会です。2017年にあった看護師の働く環境を取り巻くニュースを振り返ることで、これからのキャリア計画を考えてみましょう。
話題に関連するLALANURSEのキャリアコラムもご紹介します。合わせてそちらもぜひご参照ください。
目次
災害や感染症の多発
2017年は豪雨・台風といった気象災害による被害が各地で相次いだ一年でした。7月に発生した九州北部豪雨(死者37名・行方不明者4名)では、被災した地域の中で最大の死者数となり、床上浸水により医療機関の診療機能が停止するなど甚大な被害を受けた福岡県朝倉市へDMAT(災害派遣医療チーム)が派遣されました。また、災害支援ナースも大分県看護協会・福岡県看護協会からそれぞれの県内に派遣されています。

2017年は各地で甚大な水害に見舞われた
同災害では感染症が被災地で拡大することも懸念され、国立感染症研究所から感染症の専門家が避難所へ派遣されています。災害が発生した7月前後には全国で手足口病など感染症の流行が本格化しており、それを踏まえた対策です。2017年の手足口病の罹患者数は全国で12万人超に達し、多くの自治体で警報が出されるなど大流行となりました。
いずれのケースでも事態の収束に向けてその分野に特化した専門家が動員されており、その知見が活かされています。看護師のエキスパートである専門看護師には災害看護や感染症看護といった分野があり、こういった事例からも今後ますますその専門性が必要とされる機会が増えていくと予想されます。
災害や感染症の多発:LALANURSEの関連キャリアコラム
- 専門看護師の新分野『災害看護』の活動とその意義
災害看護が必要になった背景やその活動事例について紹介しています。 - 認定看護師制度と専門看護師制度(記事『経験とスペシャリティを生かす – 訪問看護師のキャリアアップ』内)
認定看護師・専門看護師の特定分野を紹介しています。
認定看護師・専門看護師の増加
日本看護協会の8月7日のリリースによると、第25回認定看護師認定審査の結果、認定看護師の数が全21分野で合計18,728人になりました。そのうち今回の審査で初めて1,000人を突破した『認知症看護』分野を含め、現在『皮膚・排泄ケア』や『緩和ケア』など7つの分野で1,000人以上が認定看護師として認定されています。
認定看護師が所属する病院の数は5年間で600箇所以上増加し、全国の病院の3割で認定看護師が所属するようになりました。さらに、訪問看護ステーション、クリニック・診療所、介護保険施設など病院以外に所属する認定看護師の数も、5年間でそれぞれ2倍以上に増加しています。

認定看護師の認定者数の推移(出典:認定看護師 21分野1万8,728人に 認知症看護分野1,000人突破 広がる活躍の場(日本看護協会)(http://www.nurse.or.jp/up_pdf/20170807170040_f.pdf))
認定看護師・専門看護師の増加:LALANURSEの関連キャリアコラム
- 地域医療連携における看護師の役割
地域医療連携室や退院調整看護師など、病院からの地域医療との連携について紹介しています。 - 多職種連携の必要性と看護師の役割
看護師の専門性が活きる、多職種での連携における看護師の役割について紹介しています。
社会保障制度の変化
8月1日からは一定の所得がある高齢者を対象に、医療・介護サービスの自己負担額が引き上げられました。介護保険料を納める現役世代も、収入に応じて納付金額が増減するようになりました。超高齢社会における社会保障費の増加を背景に、社会保障制度を維持していくための措置です。
また、厚生労働省は9月13日、2015年度の国民医療費の総額が42兆3644億円だったことを発表しました。これは2014年度を1.5兆円大きく上回る金額で、9年連続で過去最高記録を更新しています。これらからわかるように、医療・介護の財源問題は年々深刻さを増しています。

国民医療費・対国内総生産・対国民所得比率の年次推移(出典:平成27年度 国民医療費の概況(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/15/))
社会保障制度の変化:LALANURSEの関連キャリアコラム
- 地域医療連携が実現する『地域完結型医療』によるケア
地域医療連携の地域事例について紹介しています。 - 岐阜県に移住して看護師として働く。県内各地の看護師数や医療課題
岐阜県の医療事情について紹介しています。 - 地方における訪問看護の現状
地方での訪問看護の可能性や課題を紹介しています。
病院が減っていく時代
経営再建中の東芝が10月、自社グループ社員の福利厚生施設である東芝病院を医療法人社団緑野会へ譲渡することを発表しました。診療体制を維持したまま事業母体を移譲するということですが、譲渡ではなく閉業という可能性もなかったとは言い切れません。
10月の時点で、2017年の『医療、福祉事業』倒産件数が2000年以降で最多になる可能性が高いという予想も出ています。先述の通り、病床数削減・医療費抑制は国の方針であり、今後も病院の統廃合は免れないと予想されます。
また、介護療養型医療施設(療養病床)も2018年3月に廃止が予定されています。長期間の医療・リハビリ・介護が必要な患者を対象とする施設ですが、医療的ケアの必要性が低い高齢者が利用しているという問題があり、再編成の検討が重ねられていました。廃止後の機能移行は、介護老人保健施設や新設される介護医療院などがその受け皿になります。
病院そのものの数が減ると、そこに勤められる人の数も限られていきます。今後は看護師として働き続ける上で、病院以外の施設にも視野を広げていく必要性が高まってくるでしょう。
病院が減っていく時代:LALANURSEの関連キャリアコラム
- 訪問看護という働き方 – 看護師のキャリアを考える
病床数削減という時代背景から訪問看護師という働き方を選ぶことについて紹介しています。 - 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)での働き方
介護と看護の複合サービスである看多機での働き方について紹介しています。
まとめ:スキルに基づいたキャリア計画
病院の患者が在宅医療へ移行することと並行して、看護師も在宅の現場での活躍がより求められるようになってくるでしょう。一方で病院には、高度医療を必要とする急性期患者や、これから医療を必要とする新規患者の窓口機能が集中します。いずれの現場で働くにしても、専門性に特化した知識・能力は看護師にとって大きな付加価値となりますので、計画的にスキルを身に着けていきたいものです。
病棟看護師としての働き方:LALANURSEの関連キャリアコラム
- 専門看護師の新分野『遺伝看護』へ寄せられる期待
遺伝医療やそれに従事する看護師に求められるもの、役に立つ資格を紹介しています。 - 看護師を育てるコーチングスキル。必要性や身につける方法とは
後輩の指導やチーム力の強化に役立つスキルであるコーチングについて紹介しています - 看護外来で働く看護師(外来看護師)に求められる力
ニーズが増えている看護外来で働く看護師に求められるものについて紹介しています。 - 特定行為に係る看護師(特定看護師)の働き方
看護師が行う処置の幅を広げる特定行為に係る看護師になるための研修制度について紹介しています。
訪問看護師としての働き方:LALANURSEの関連キャリアコラム
- 訪問看護という働き方 – 看護師のキャリアを考える
訪問看護師の特色や訪問看護の未来像について紹介しています。 - 経験とスペシャリティを生かす – 訪問看護師のキャリアアップ
訪問看護師としてのキャリアアップ方法について紹介しています。 - 訪問看護eラーニングが5分でわかる3つの特徴。受講料0円の場合も
自宅で訪問看護の学習ができるeラーニングについて紹介しています。
また、LALANURSEではキャリア形成を支援する求人情報も多数掲載しています。ぜひご覧ください。

今年を振り返り、来年の目標を考えながら年末を迎えよう
ニュース出典
- 九州豪雨でDMAT派遣、医療機関に浸水被害も 厚労省が災対本部設置、DPATは待機(医療介護CBnews)
- 災害看護活動実績年表(日本看護協会)
- 九州豪雨、感染症の専門家を避難所に派遣 感染研、厚労省からの指示を受け(医療介護CBnews)
- 全国で大流行 累積患者数が12万人(毎日新聞)
- 認定看護師 21分野1万8,728人に(日本看護協会)
- 専門看護師 11分野1,883人に(日本看護協会)
- 平成27年度 国民医療費の概況(厚生労働省)
- 次の医療計画、「地域包括ケア計画に」 厚労省医政局長(医療介護CBnews)
- 2017年3月1日 第3回全国在宅医療会議ワーキンググループ(厚生労働省)
- 東芝病院事業の譲渡に関する基本合意書締結について(東芝)
- 2017年1-9月「医療,福祉事業」の倒産状況(東京商工リサーチ)